本番前最後の強化試合へ
侍ジャパンは9日、翌10日から行われる強化試合を前に試合会場となる東京ドームでの公式練習に臨み、WBC本大会に向けた最後の国際試合に向けて、投内連携やフリーバッティングなどで汗を流した。
公式練習後には、侍ジャパンを率いる小久保裕紀監督、メキシコ代表のエドガー・ゴンザレス監督、オランダ代表のヘンスリー・ミューレン監督が共同で前日会見を実施。今回の強化試合に向けた意気込みなどを語った。
来春のWBCでの「世界一奪還」を目標に掲げる小久保監督は、「ある程度は本番を見据えた負けられない中での試合運び、ゲームプランになる。勝つためにどうするかという采配をしていきたい」と語り、WBC本番でカギとなる継投に関しても「5人いるので、権藤コーチと打ち合わせながらやっていく」と本番モードで臨む意向を示した。
日本を知る両国の指揮官
かつて巨人でプレー(2010年、2012年)したメキシコのエドガー監督は、山田(ヤクルト)や筒香(DeNA)の名前を挙げつつ、「多くのパワーヒッターがいるし、日本のトッププレーヤーが集っている」と侍ジャパンを警戒。元チームメイトの坂本勇人について尋ねられると、「インハイに投げるからと脅かしておいた(笑)」と冗談を口にする場面も。
一方、ロッテとヤクルトで活躍(1994年~1996年)したオランダ代表のミューレン監督は「若手中心の未来を見据えた人選」ではあるものの、日本と同様にWBC前に行う最後の国際試合となるため、「この機会を真剣にとらえているし、勝ちにいきたい」と意気込んだ。
また、ミューレン監督はサンフランシスコ・ジャイアンツのコーチを務めていることもあり、今大会は自身にとって「スカウトの機会でもある」とコメント。「チームの力になってくれそうな選手を積極的に発掘したい」と続け、オランダが試合を行わない10日と11日の試合も観戦する意向を明かした。
侍ジャパンは10日と11日にメキシコ代表と、12日と13日にはオランダ代表と東京ドームで対戦する。
▼ 監督会見・一問一答
エドガー監督(メキシコ)
「このような機会をいただいたことに感謝しているし、日本と戦えることを光栄に思っている。願わくば、日本が私たちにとって難しい敵にならないことを祈っている」
小久保監督(日本)
「11月という時期にメキシコとオランダから代表チームが日本に来てくれたことに感謝申し上げます。我々にとっては、WBC前に行われる最後の強化試合になるので、両国の力を借りながら最終調整の試合にできればと思います」
ミューレン監督(オランダ)
「メキシコのエドガー監督同様、NPBに感謝している。オランダは若手中心の未来を見据えた人選で今大会に臨んでいる。東京ドームでのプレーは私たちにとって、野球人にとって非常にエキサイティングなものです。なぜなら、東京ドームが醸し出す雰囲気は本当に素晴らしい。最後にこのような機会を与えていただいたことに感謝します」
――試合に向けた意気込み
エドガー監督(メキシコ)
「最終的な目標は勝利。日本は強敵だが、勝利するためにゲームプランを練りたい」
小久保監督(日本)
「先ほども言ったとおり、WBC前に行う最後の強化試合なので、この4試合を、4日間を大事にしたいと思います。戦い方は、ある程度は本番を見据えた負けられない中での試合運び、ゲームプランになると思います。全力で勝つためにどうするかという采配をしていきたいと思います」
ミューレン監督(オランダ)
「昨今、世界の野球情勢が変化してきている。イスラエルが予選を突破したり、ブラジルが予選で敗退するなど、WBCの舞台がより拮抗したものになってきている。私たちオランダ代表も世界ランキングが上がっており、この調子でいきたい。小久保監督が言っていたように、WBCを前にした国際大会は私たちにとっても最後の機会になる。この機会を真剣にとらえているし、勝ちにいきたいと思う」
――お互いのチームの印象は?
小久保監督(日本)
「チームの印象というよりは、ここにいる両監督は日本のプロ野球界を経験しているので、どういった采配をしてくるのかに興味があります。今回は初めて招集した選手もいるので、その選手たちがWBCで使用するボールに対応できるかといったところをしっかりと見極めていきたい」
エドガー監督(メキシコ)
「日本に関してはスカウティングレポートで学んできた。多くのパワーヒッターがいるし、日本のトッププレーヤーが集っている。個人名を挙げると、山田や筒香といった良いシーズンを送った選手がいる。また、スピードに優れ、守備に秀でており、投手陣も申し分のない完成されたチームという印象。我々は基本に忠実にプレーして勝利を目指したい」
ミューレン監督(オランダ)
「メキシコのエドガー監督と同意見。ロースターを見ても、日本がいかに強いチームであるかは理解している。私たちにとって幸運なのは、田中や前田、イチローといった選手がいないことだ」
――日本には大谷という選手もいることを知っているか
エドガー監督(メキシコ)
「もちろん。私だけでなく、MLBの関係者は大谷の存在を理解している。彼は投げるだけではなく、走るだけでも、打つだけでもない。大きな可能性を秘めたアスリートだと思っている。私の中では、ベーブルースのような打ってよし、投げてよしという選手。聞いた話では、メキシコ戦で投げることはないと聞いているので、それは少しラッキーだったと思う。どのチームも大谷のような選手が欲しいのではないだろうか」
ミューレン監督(オランダ)
「私はオランダ代表の監督であると同時に、サンフランシスコ・ジャイアンツのコーチも務めている。今回のようなゲームに携わる機会は、私にとって全てスカウトの機会でもあると思っている。日本のみならず、メキシコのチームにも素晴らしい選手がいないかどうか、私たちは土日しか試合をしないが、木曜日も金曜日も東京ドームにきてサンフランシスコ・ジャイアンツとサインをしてくれそうな、チームの力になってくれそうな選手を積極的に発掘したいと思っている。オランダ代表の監督だが、それが私のもう1つの務めだと思っている」
――明日のオーダーは決まっているのか?
小久保監督(日本)
「先発は決まっているがスタメンはまだ決めていない。(4番には誰を置こうと思っているか?)打順は今夜決めます」
――WBCに向けた目標は?
小久保監督(日本)
「(WBCの)第1回大会と第2回大会で世界一になった。WBCは日本ではトッププレーヤーが集まる大会だと認識されている。3回目は優勝できなかったが、4回目に世界一を奪還するという目標を持って進んでいきたい。そのためには、明日からの4試合を意味のあるものにしたいと思っている」
――明日の先発・スタメンは決まっているか?
エドガー監督(メキシコ)
「スタメンはまだ決めていない。先発はホセ・オイエルビデス。彼はパドレス傘下のシングルAでプレーしている。パワーのある良いピッチャーなので、明日の先発として起用する予定」
――これまでは機動力野球などテーマを持って取り組んできたが、小久保監督の形、テーマというものはあるか?・小久保
小久保監督(日本)
「一番の強みは投手力だと思うので、その投手力を中心とした守りの野球というものをやっていきたい。中継ぎと抑えで5人入っているので、2番手以降のつなぎという部分も権藤コーチと打ち合わせしながらやっていきたいと思います。攻撃面に関しては、機動力もあるが、国際大会を経験していくなかで単独スチールが難しいという現状があるので、手堅く送りバントで進めるケースもでてくるかと思っている」
――中田にかける期待、役割とは
小久保監督(日本)
「前回大会では、将来の4番候補という意味合いも込めてWBCに選出された選手。私が監督になってからもずっと呼んできた。侍の4番と言えばという“顔”の選手だと思っているので、明日から大暴れしてくれると思う」
――かつてのチームメイトでもある坂本の印象について
エドガー監督(メキシコ)
「坂本はかつてのチームメイトというだけでなく、友人でもある。彼が素晴らしいのは、継続して活躍し続けていること。さっき会ったときにインハイに投げるからと言って脅かしておいた(笑) それは冗談だが、彼にはインコースやアウトコースを使うということは決めていない。なぜなら、彼はどちらにもアジャストしてくる。なんとか工夫をして坂本からアウトを取ろうと思う」
――両監督はMLBもNPBも経験している。かつて日本はスモールベースボールを掲げていたが、両監督から見て日本のスタイルにはどういった印象を持っているのか?
ミューレン監督(オランダ)
「スモール? ノー(笑) 前回、私たちが日本代表と戦ったときは多くの本塁打を打たれて16失点した。それでスモールベースボールとは言えないと思う(笑)」
「日本は常に基本に忠実だ。さらに、ミスをほとんどしない。それは、守備においても、走塁においても、ピッチングにおいても言えること。非常にくみしにくい相手だ。小久保監督は試合ごとに色々な作戦を練ってくると思うが、日本はとてもダイナミックなチーム。私たちのミスからビッグイニングを作る破壊力もあるし、思うように得点できない投手力もある。日本の強みは色々な手法を兼ね備えているところだと思う」
「前回のWBCを思い返してみてほしい。日本は確か第1ラウンドで本塁打1本くらいだった(実際は0本)が、第2ラウンドに入った瞬間、私たち相手に6本の本塁打を放つような長打力も兼ね備えたチームだ。私はそういった印象を持っている」
エドガー監督(メキシコ)
「日本はどちらの野球もできる。バント、スチール、ヒットエンドランを絡めたスモールベースボールもできるし、パワーゲームもできる。日本のロースターを見ると、野手で25本以上の本塁打を放った選手が多いことに気が付く。長打力を兼ね備えた非常にレベルが高いチームだと思っている」