衝撃を与えた大型トレード
みなさんに印象に残る「トレード」について尋ねたら、一体どれを選ぶだろうか。
今では当たり前のようにあるフリーエージェントという制度がなかった頃、選手の移籍となるとトレードくらいしか手段がなかったもので、さほど珍しいものではなかった。しかし、近年はその数も激減。年に数回あるほどで、有名選手が絡むと大きな衝撃を持って伝えられる。
近年の“大型トレード”というと必ず挙がるのが、2013年の1月に成立した日本ハムとオリックスのトレード。冒頭の質問を見た時、この一件を思い出したファンの方も少なくないのではないか。
監督、選手にも衝撃...
2013年1月25日。キャンプを来週に控えた球界に激震が走った。日本ハムとオリックスの間で総勢5名が絡むトレードが成立。日本ハムはチームの中心選手である糸井嘉男と八木智哉を放出し、木佐貫洋、大引啓次、赤田将吾の3名を獲得した。
糸井と言えば日本ハムの中心選手であり、このオフには侍ジャパンの一員としてキューバとの強化試合に参戦。第2戦ではジャパンの4番を任されたほどであった。
しかし、契約更改では日本ハムとなかなか折り合いがつかず。越年が決まり、決着に注目が集まっていたさなかのトレード決定。栗山英樹監督が「悲しいこと」という異例のコメントを残し、チームメイトはあ然。驚きは海の向こうにも渡り、日本ハムから世界へと羽ばたいたダルビッシュ有も「糸井さんトレードとか、ありえん」と直球のつぶやきを残している。
あの衝撃からもうすぐ4年...。糸井がFAでオリックスを去ったこの秋をもって、この大型トレードの選手たちは全員それぞれのチームから去った。
戦力外から這い上がった男
糸井とともにオリックスへと渡った左腕の八木智哉は、移籍後2年間で一軍登板はわずか6試合。0勝2敗とオリックスでは1勝も挙げられないまま戦力外となった。
しかし、トライアウトを経て中日との契約を勝ち取ると、加入1年目の2015年には開幕ローテーション入りを果たして4勝(6敗)をマーク。4月4日の広島戦ではあの黒田博樹と投げ合い、982日ぶりの一軍勝利を挙げたことで大きな話題を呼んだ。
今シーズンは1試合のみの登板に終わるなど結果を残せず。来シーズンは勝負の一年となりそうだ。
気がつけば皆セ・リーグに?
一方で日本ハムに渡った3人はどうか。大引啓次は持ち前のシュアな打撃と堅守で貢献。2年目の2014年には異例の主将も務めるなど、2年間で252試合に出場した。
しかし、2年目は打撃で不振に苦しみ、クライマックスシリーズではショートの経験がない若手にポジションを奪われる屈辱も...。結局、オフにFA権の行使を宣言し、在籍2年でヤクルトへと移籍している。
そして、大引とともに日本ハムへと移った木佐貫洋、赤田将吾の2名はすでに引退。木佐貫は古巣・巨人に戻ってスカウトとして活躍を見せており、赤田も今年は古巣・西武で育成コーチを務め、来季からは二軍の打撃コーチ兼守備・走塁コーチとして後進の育成にあたる。
あの衝撃から4年...。気づけば現役でプレーを続ける当事者は3人になり、それぞれのチームを飛び出してセ・リーグに集まった。
3人による競演、対決は見られるか。来季のたのしみのひとつになる。