破格条件の代償...
メジャーのストーブリーグが12月に入って盛り上がりを見せる一方、日本のストーブリーグは対照的に11月終盤から12月頭にかけて山が来た後、ゆるやかに落ち着きを見せ始める。
FA市場も残すは陽岱鋼の行方を待つくらいで、状況としては巨人と楽天の一騎打ち。それも巨人有利の見方が多く、入団秒読みなどという声も聞かれる。いずれにせよ、結論はもう間もなくということは間違いない。
FAで盛り上がるポイントと言えば、選手に提示する“大型契約”だろう。今年も阪神が糸井嘉男に4年18億超えという条件を提示したことが報じられており、楽天も岸孝之に4年16億円という条件を提示したと伝えられた。
しかし、これだけ破格の条件になってくると、移籍した後が大変。このオフにも、かつてFA移籍から複数年契約を結んだ選手の契約更改で少し違和感を感じてしまうような場面があった。
2年で6勝も“現状維持”
たとえば、ヤクルトの成瀬善久。ロッテからヤクルトへと移籍したのが2014年オフのことで、その時に3年契約を結んでいる。
ロッテではエースとしてチームを牽引してきた男。パ・リーグを代表する左腕投手として鳴り物入りでヤクルトにやってきたが、この2年ははっきり言って期待通りの活躍を見せているとは言えない。
【成瀬善久・移籍後の成績】
2015年:14試合(79回1/3) 3勝8敗 奪三振46 防御率4.76
2016年:22試合(72回1/3) 3勝2敗 奪三振42 防御率5.60
この2年間で挙げた勝利はわずかに6つ。防御率も、かつてタイトルを獲った男の面影はない。加えて今季は22試合のうち、先発したのは10試合。あとはリリーフ登板であった。
すべてにおいて物足りない成績に終わった成瀬だが、12月5日に行われた契約更改では“現状維持”で更改。1億4400万円(推定)でサインしている。
ふつうならあり得ないような話だが、上でも触れたように成瀬は3年契約を結んでいる。来季がその最終年。そのため、年俸はそのままとなる。
もちろん成瀬に限ったことではないが、複数年契約を結ぶ際にはこういった危険がはらんでいるのだ。
ベストナイン&ゴールデングラブでも大幅減!?
一方で、この“違和感”ある契約更改がもう一件あった。巨人の村田修一である。
村田は12月1日に契約更改を行い、2億2000万円(推定)でサイン。8000万円のダウン提示だった。
今年が3年契約の最終年だった男は、レギュラーが確約されない中、競争を勝ち抜いて143試合に出場。3年ぶりの3割超えとなる打率.302を記録し、チームトップの25本塁打と81打点を挙げた。
ベストナインとゴールデングラブ賞をW受賞するなど、まさしくリーグを代表する三塁手として活躍を見せたわけだが、球団から提示されたのはまさかの大幅ダウンだった。
上述の通り3年契約の最後だったこともあり、「この3年間をトータルで見た上での評価」だというのが球団側の見解。村田のここ3年の成績は以下の通り。
【村田修一・直近3年の成績】
2014年:143試合 打率.256(519-133) 本塁打21 打点68
2015年:103試合 打率.236(330-78) 本塁打12 打点39
2016年:143試合 打率.302(529-160) 本塁打25 打点81
こうして振り返ってみると、たしかに最初の2年間は鳴かず飛ばずな成績だった。ただし、こうした背景がわからずに今年の村田に対して8000万円減という提示がされるのを見たら、やはり驚きを感じずにはいられなかっただろう。
安定と引き換えに、多大なるプレッシャーに晒される“複数年契約”。このオフの目玉たちが数年後どんな評価を受けているのか、移籍した後こそ本当の勝負になる。