セ・リーグ5位のチーム打率 ポストシーズンのカギは打線の奮起にあり
セ・リーグ3連覇を果たした巨人。開幕前は、質量ともに豊富な戦力で独走するという声も多かったが、9月になるまでなかなか抜け出すことはできなかった。その一因は、間違いなく打線の不調にある。
チーム打率.256はリーグ5位、592得点は同4位。チーム内最高打率が、長野久義の.297で打率ランキング13位。残り試合で長野が打率ベスト10に入らなければ、2リーグ制後では2011年中日、1986年広島に次いでリーグ3チーム目の「打率ベスト10に入った選手がゼロ」での優勝となる。
また、巨人の選手が打率ベスト10に入らないのは、80年(ホワイトが.284で15位)、05年(二岡智宏が.301で14位)以来3度目のことだ。
リーグトップの防御率3.60の投手陣を中心とした守りの野球で3連覇を果たしたが、リーグ防御率トップの菅野智之が右ヒジのケガで離脱した。迎えるポストシーズンでは打線の奮起が必要となる。キーマンのひとりとしてあげたいのが坂本勇人だ。クライマックスシリーズ・ファイナルステージで対戦するのは、広島か阪神のどちらか。今季の坂本は、広島に対し打率.304、7本塁打。阪神に対し打率.316、2本塁打。巨人の主力野手で、両チームに対し3割以上の成績を残しているのは唯一、坂本だけである。
対チームだけではなく、坂本は両チームの主力投手に対しても好成績を残している。
広島のエース前田健太に対し18打数5安打、打率.278で1本塁打。新人王候補のひとりでもある大瀬良大地に対し13打数7安打、打率.538で3本塁打。野村祐輔に対しては8打数5安打、打率.625で1本塁打。
最多奪三振のタイトルが確実な阪神のメッセンジャーに対し24打数8安打、打率.333で1本塁打。エース能見篤史に対し19打数5安打、打率.263で1本塁打。中継ぎ陣の一角の金田和之に対しては8打数5安打、打率.625。
チームリーダーになるために… 必要なのは“大舞台”での結果だ!
では、ポストシーズンでの成績はどうだろうか。坂本はプロ入り後、ポストシーズンを6度経験している。クライマックスシリーズでは通算90打数21安打、打率.233。日本シリーズには4度出場し、通算89打数21安打、打率.236。12年の日本シリーズで25打数9安打、打率.360を残しているのが目立つくらいで、ポストシーズンに強いとは言えない選手である。
坂本は、負担の多いショートのポジションにつきながら、今季も全試合出場を続けている。5月1日のヤクルト戦で代走のみの出場となり連続試合出場記録は途切れたが、2010年から5年連続で全試合に出場(※注)。巨人の内野手では王貞治(1971~74年)を抜き、最長記録である。
長年チームを引っ張ってきた高橋由伸が来年で40歳。攻守の要である阿部慎之助も36歳になる。今年の12月で26歳になる坂本が、これからの巨人を引っ張る存在にならなければいけない。チームリーダーに必要な強い体を持つ坂本に足りないものは、ポストシーズンでの結果だ。
15日に始まるクライマックスシリーズ・ファイナルステージ。チームの命運と、巨人の将来を担う坂本のバットに注目したい。
(数字はすべて10月4日時点)
(※注)公認野球規則10・23 連続記録の規定に「プレーヤーが連続試合出場を記録するためには、少なくとも自チームのあるイニングの守備(回の初めから終わりまで)に出場するか、あるいは塁に出るかアウトになって打撃を完了しなければならない。代走として試合に出ただけでは、連続試合出場を記録したことにはならない」とあるため。
文=京都純典(みやこ・すみのり)