チームの若返りを象徴する 稲葉篤紀と金子誠の引退
2014年のプロ野球はソフトバンクの3年ぶりの日本一で幕を閉じた。昨季の覇者・楽天が最下位に沈んだばかりか、AクラスとBクラスが総入れ替えするなど、相変わらずの“混パ”ぶりだったパ・リーグ。
2012年のリーグ優勝から一転、昨季は最下位という屈辱を味わった日本ハムは3位に浮上。CSでは2位・オリックスを打ち破り、王者・ソフトバンクを最後まで苦しめるなど、大いに球界を盛り上げた。
その原動力は、20歳の大谷翔平をはじめ、西川遥輝、中島卓也、近藤健介ら20代前半の若き戦力である。もちろん、小谷野栄一、大引啓次らベテラン勢も健在ではあるが、シーズン終盤、チームの若返りを如実に表すニュースがプロ野球ファンの間を駆け抜けた。稲葉篤紀と金子誠がユニホームを脱いだのだ。近年の“強い日本ハム”の顔として長く活躍し、精神的支柱としての役割も担ってきた二人の引退は、一つの時代の終わりを感じさせる象徴的な出来事であった。
新生ファイターズの顔ぶれは 栗山監督にすら分からない!?
そんな世代交代が進むチームに田中賢介(元テキサス・レンジャーズ傘下)が復帰するとの情報が流れたのは10月上旬。2006年以降、日本ハムは4度のリーグ優勝を重ねてきた。田中もまた、稲葉や金子とともに、常勝ファイターズを支えた不動のレギュラーであったことは言うまでもない。
チームに田中が本当に復帰するとなると、現在のレギュラー陣も安穏とはしていられない。日本ハムはそもそも他球団と比べポジションが流動的なチームである。今季の西川は、シーズン終盤こそ右翼手でほぼ固定されたが、他に一塁手、二塁手としても出場。また、本来二塁手である中島は一塁手を除く内野3ポジションで出場している。今季途中で離脱した小谷野に代わり三塁手を務めた近藤に至っては、本来、捕手である。近藤の場合、横浜高校1年時は遊撃手だったこともあり、シーズン終盤では遊撃守備にもついたばかりか、11月7日に開幕する第1回IBAF21Uワールドカップでは一塁手に挑戦する。また、西川は三塁手の練習にも取り組んでいるという。
彼ら若き主力のほか、小谷野、大引のベテラン勢、昨年のドラフト1位・渡邉諒もレギュラー争いに絡んだ上での田中の復帰話。MLBでは外野手も経験した田中だが、もちろん本職は二塁手である。まさにレギュラー争いは“混沌”ともいうべき状況なのだ。その結果、選手間にある刺激によって、チーム力もアップする可能性は十分にあるだろう。
気が早いのは承知だが、新生ファイターズの来季レギュラー陣の顔ぶれは果たしてどうなるのか? 栗山英樹監督ですら、今から頭を悩ませていることかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)