大引に小谷野のベテラン内野手、果たしてどう使う?
FA交渉が解禁となり、ストーブリーグもにわかに活気づいてきた。来季を見据え、各球団が補強に動き始めている。
今季、ソフトバンクにわずかに及ばず18年ぶりのリーグ優勝を逃したオリックスも例外ではない。ただ、その補強のビジョンというものが見えてこないのが気になるところ。11月15日、都内で入団交渉を行ったのが、日本ハムからFA宣言した大引啓次。古巣に復帰となれば、かつての選手会長だけにチームリーダーとしての役割も期待できる。
ただ、大引といえば、2012年オフにトレードで放出されたことは誰もが知るところ。「わだかまりこそない」というが、ショートには今やリーグ屈指の名手に成長した安達了一がいる。ショートへのこだわりが強い大引をFAで獲得してわざわざ他ポジションで使うことは考えにくい。
さらに、大引と同じく日本ハムからFA宣言した小谷野栄一とも近日中に交渉を行うという。ただ、小谷野の本職であるサードには、2年契約の1年目を終えたばかりのエステバン・ヘルマン、またファーストにはチームの顔の一人であるT-岡田がいる。果たして、いったいどのようなチーム構想をしているのだろう。
ペーニャとの残留交渉も不調……下手すれば大幅戦力ダウンも
もちろん、井端弘和と片岡治大をダブル獲得した昨季オフの巨人のように、選手層を厚くするという狙いも考えられる。何しろ、チームどころか球界を代表する大エース・金子千尋の退団が確実視されているのだ。投手力の穴埋めができなければ野手で厚みを……という選択肢も理解できなくもない。
ただ、大引にしても小谷野にしても、現実的な補強策とはどうも思えないのだ。若手への世代交代が進む日本ハムからFA宣言したということは、両者とも出場機会を求めていることもFA権行使の大きな理由の一つのはず。オリックスの内野事情を考えれば、その希望に応えられるとは考えにくい。大引に、「ミスタースワローズ」の背番号1を用意しているヤクルト、小谷野のために正三塁手の座を空けている西武には水をあけられていると言わざるを得ない。
そもそも、補強の前に現有戦力に目を向ければ、今季リーグ3位の32本塁打、同2位の90打点をたたき出したウィリー・モー・ペーニャとの残留交渉も不調だという。ペーニャが抜ければ得点力の大幅ダウンは避けられないが、単年契約を提示したオリックスと、複数年契約を希望するペーニャの主張の隔たりは大きく、退団も現実味を帯びてきている。
かと思えば、DeNA退団が決定的とされるトニ・ブランコの獲得調査を進めているという報道も飛び込んできた。ただ、ペーニャ、ブランコ、両者の獲得調査は楽天など他球団も進めており、こちらも簡単にはいきそうもない。
来季の戦力を整えるという意味では、どうにも中途半端で後手に回っている印象を拭えないオリックス。今のところ、成功したのは平野佳寿の残留くらいだろうか。気が付けば誰もいなくなった……なんてことになれば目も当てられない。「来季こそ!」と期待するファンに、朗報を聞かせることはできるのだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)