嶋と炭谷がFA宣言せず残留 ポスト谷繁の育成が急務
ソフトバンク3年ぶりの日本一で幕を閉じた今季のプロ野球。ドラフトも終わり、ストーブリーグに突入した。
フリーエージェントの目玉として、その動向に注目が集まっていたのがレギュラー捕手をはれる、嶋基宏(楽天)と炭谷銀仁朗(西武)。FA宣言か?という報道もあったが先日、両選手とも宣言せずに残留することが明らかに。
炭谷がFA宣言した場合、獲得に乗り出すと言われていたのが中日だ。真相はわからないが、何かしらのアクションを起こす可能性は高かったと考えていいだろう。
谷繁選手兼任監督の下で巻き返しを図った中日だったが、28年ぶりとなる2年連続Bクラスに終わった。大きな要因は、長年、中日の課題と言われているポスト谷繁を今季も解決できなかったことにある。捕手としてプロ野球史上最多出場を誇り、来季早々には野村克也氏の持つ通算最多出場3017試合を更新するであろう谷繁の後継者は、そう簡単には見つからない。
シーズン後、田中大輔とベテランの小田幸平に戦力外を通告。ドラフトで青山学院大の強肩捕手・加藤匠馬を指名したが、いきなり多くの試合でマスクをかぶることは難しいだろう。
そのようなことからも分かるように、苦しい捕手事情の中日だが……今季の成績から捕手について考えてみたい。
まずは攻撃面。今季、1軍出場した捕手は6人だ。赤田龍一郎をのぞく5人がスタメンで出場した。最多は、谷繁の81試合で松井雅人が40試合。シーズン途中に西武から獲得した武山真吾が16試合で小田幸平が6試合、田中大輔が1試合でスタメンマスクをかぶった。
打率で見ると、谷繁の.195が最も高く、松井が.176、武山が.127と寂しい数字が並ぶ。打率以上に深刻なのが出塁率だ。谷繁は.316と及第点の成績を残しているが、松井は.259、武山は.176だった。谷繁は274打席で39個の四球を選んでいるが、松井は162打席で16四球、武山は72打席で3四球しか選べていない。せめて.300以上の出塁率は残したいこと思えば、四球の少なさも気がかりだ。
捕手別防御率では大きな差はなし。速球派投手の時は若手捕手の起用を!
守りの面ではどのような数字が残っているだろうか。
先発投手の捕手別防御率を見ると、谷繁が3.71、松井が3.38、武山が2.86。この数字だけを見ると、谷繁以外の捕手でも不安がないように感じる。しかし、先発投手別の防御率を見ると、また違った一面が浮かび上がってくる。
主な先発投手では、雄太が谷繁と16試合でバッテリーを組み、防御率2.90。松井とは2試合で6.30だった。大野雄大は谷繁と16試合で防御率3.11。松井とは7試合で2.63。武山とは2試合で2.25。山井大介は谷繁と17試合で3.40。武山とは8試合で2.67。松井とは2試合で4.09。濱田達郎は谷繁と10試合で3.13、松井とは7.64。
この数字から見る限り、大野や山井といった速球で押せるタイプのピッチャーは、若手捕手と組んでもそれなりの成績を残しているが、雄太や濱田のような速球があまり速くなく、変化球で打たせて取るタイプの投手は谷繁と組んだ時のほうが好成績を残しているようだ。
試合によって投手の調子は異なることから、捕手のリードがすべてとは言わないが、谷繁と若手捕手の差はまだまだ大きいと言わざるを得ない。速球派投手の時は将来を見据え若手捕手を起用し、配球がより重要となる投手の時は谷繁がマスクをかぶるなど、明確なる方針をある程度決めたほうがいいだろう。
攻守にわたり、谷繁に頼らなければならない部分がまだ大きいのが中日の捕手事情。次世代を担う捕手が出てくるかどうか。中日の巻き返しは、すべてそこにかかっていると言っても過言ではない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)