コラム 2014.11.25. 19:17

12年=育成選手、13年=先発9勝、そして14年=侍ジャパンの守護神!ロッテ・西野勇士が辿った球歴とは…

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小久保ジャパンのクローザーに抜擢されたロッテ・西野勇士投手 [Getty Images]

育成選手から日本代表のクローザーへ!


 8年ぶりに開催された日米野球。地上波で全試合生中継されるなど注目を集める中、小久保裕紀監督率いる日本代表が3勝2敗。24年ぶりに勝ち越して終わった。

 勝ち越しを決めた第3戦は、日本代表4投手の継投によるノーヒットノーラン。先発の則本昂大(楽天)が5回まで抑えると、西勇輝(オリックス)、牧田和久(西武)とつなぎ、最終回は西野勇士(ロッテ)が締めた。

 試合後のお立ち台で、「ビックリです」「吐きそうでした」「とにかくホッとしました」と素直な感想を述べた西野。それもそのはず、クローザーとなって1年目なのだ。
育成選手から支配下登録選手となり、昨シーズンは先発として9勝。ローテーションの一角として期待されていたのが、チーム事情によりクローザー転向。コントロールを乱さない安定感に、150キロを計測するストレートとフォークのコンビネーションで31セーブ(リーグ3位)と結果を残し、小久保監督の目に留まったのだった。

 西野は1991年3月生まれ、富山県高岡市出身。高岡市立川原小学校では、少年野球チーム「川原タイガース」に所属。同市立西部中学校時代は、硬式クラブ「高岡ボーイズ」の第2期生として、主に外野手、三塁手としてプレーしていたという。

 高校は地元の進学校・高岡高校をすすめられたが、自転車で1時間かかる新湊高校へ。プロをめざして野球に打ち込む日々を選んだ。1年夏から投手となり、3年春の県大会では、延長15回を投げ抜くなどしてベスト8。野球専門誌では、富山県の注目選手として「安定感では県ナンバーワン」「スライダーを武器に高い完成度を誇る」と紹介される存在になった。
エースとして臨んだ3年夏の県大会。全5試合に登板して決勝進出を果たすも、準優勝で全国デビューならず。卒業後の進路として、指導者は大学進学をすすめたそうだが、本人の希望はプロ一筋。プロ志望届を提出して指名を待った。

 2008年秋のドラフト。同じ北信越の中村悠平(福井商業高→ヤクルト3巡目)がプロ入りの喜びにあふれる陰で、西野はロッテの育成5巡目。プロへとつながる細い細い道を得た。ちなみに、この年、日米野球ノーヒットノーランリレーの一員・西勇輝(三重・菰野高)が、オリックスの3巡目指名を受けてプロ入りしている。


与えられたチャンスをモノにする「育成魂」!


 背番号131をつけた育成1年目は、イースタンリーグ(2軍)での登板なし。少しずつプロの水に馴染み、4年目の2012年11月、念願の支配下登録選手となり、背番号67を得た。

 1軍デビューは、5年目となる2013年。キャンプ、オープン戦と結果を残し、先発投手が足りないチーム事情からチャンスをつかんだ。象徴的だったのが、育成選手として初となる「プロ初先発初勝利」。4月7日にプロ初先発を果たすも、降雨ノーゲーム。遠征先で投手が足りない事情から、「明日も行けるか」と斉藤明雄投手コーチ(当時)に聞かれると、「行きます」と即答したという。結果、チームの3連敗を止めるプロ初勝利を挙げ、「西野がチームを救ってくれた。この次も期待できる」と伊東勤監督の信頼を得て、ローテーション入りを果たした。

 2013年は、チーム最多となる9勝。オールスターに選出され、CSでは中継ぎとして起用され勝利。「育成選手として初」の称号を増やし、オフの年俸交渉では、球団史上最高の500%アップという評価を受けた。

 2014年シーズンは二ケタ勝利だろうと期待が高まる中、2013年のセーブ王・益田直也の故障により、突然のクローザー転向。本人曰く「試行錯誤しながら」準備や調整法を身につけ、「いつクビになってもおかしくない中でやってきた、育成魂です」という勝負根性も発揮して、開幕から14試合連続無失点。低迷したチームの中で奮闘した。

 そして、たどり着いた日本代表。「日の丸を背負って戦うのは初めてで、とても光栄です。自分の球がどれだけ通用するのか、試してみたいです」という意気込みを持って、東京ドームのマウンドへ。1本のヒットも許されない緊張感の中、MLBオールスターの上位打線を抑えきった。19日に沖縄で行われた親善試合でも、最終回に登板。1点を失ったものの、日本代表のクローザーとして、小久保監督の期待と信頼が感じられる起用だった。

 来シーズンは、このままクローザーか、先発に再転向か。どちらにしても、与えられたチャンスを一つひとつ生かしてきた野球人生。与えられた場所で精いっぱい投げ、一つずつ結果を残していくだろう。その先に「育成選手初のメジャーリーガー」となる可能性は十分あると感じさせてくれた、2014年の日米野球だった。

文=平田美穂(ひらた・みほ)

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