ダルビッシュの快投も5日後に記録が訂正された!
「MLB機構は、○○日の××戦でのイチロー選手の内野安打を野手の失策に訂正すると発表した」
スポーツ新聞の片隅にこんな記事を見ることがある。日本では試合中に記録が訂正されることは稀にあるが、MLBでは試合から数日後、ときには数ヵ月後に訂正されることも珍しくない。
5月9日のテキサス・レンジャーズ対ボストン・レッドソックス戦で、レンジャーズのダルビッシュ有投手が、7回2アウトまでパーフェクトピッチングを見せた試合でも、ある記録が後日訂正された。
7回2アウトからデビッド・オルティスが放った打球を右翼手と二塁手が譲り合ったために、ダルビッシュのパーフェクトは潰えたものの、9回2アウトまでノーヒットピッチングを続けノーヒッター達成まであとひとりまでこぎつけた。結果、オルティスに二遊間を抜く初安打を許し、MLB史上3人目となる9回2アウトからノーヒッターを逃した投手となった。
この試合の7回の失策に関し、野手のグラブに触れていなかったこともあり、オルティスは「100年以上も使われているルールではヒットだ」と主張し、レッドソックスのファレル監督も「あれはヒットでは?」と疑問を投げかけた。
そういった声を受けてか、試合から5日後の14日、MLB機構は失策を安打に訂正し、ダルビッシュの被安打は2とすることを発表したのである。日本では、ちょっとした騒ぎになるかもしれないが、MLBではニュースのひとつとして報じられただけだった。記録の訂正が、ある意味で日常となっているのである。
一度はコールドゲーム成立も異議をうけて2日後に試合再開
記録が訂正されるのは、基本的に安打か失策かに関することだけで、アウトかセーフかなどが訂正されることはない。
しかし、ちょっと変わったレアケースではこんなこともあった。
8月19日、シカゴのリグレーフィールドで行われたシカゴ・カブス対サンフランシスコ・ジャイアンツ戦で、カブスの先発として登板した和田毅は6安打を許しながらも5回まで無失点の好投を見せていた。しかし、カブスが2点のリードを奪ったところで激しい雨が降り始め、試合は中断に。4時間34分の中断後、コールドゲームが宣言され、5回とはいえ和田はメジャー初完封で3勝目を挙げたのだ。
NPBならば当然のことそのまま終わる話だが、プレーオフ進出の可能性があったジャイアンツが「試合は続行できたはず」とMLB機構に異議を申し立てた。機構側も迅速に対応し、翌20日には「21日の夕方に、5回裏カブスの攻撃から試合を再開する」と発表。
結果的に、再開後の試合でもカブスの勝利は変わらなかったが、「野球の試合は9回まで行うもの」、「勝敗はきっちりつける」というMLBの精神を感じる出来事だった。
たかが1安打や1勝かもしれないが、選手によってはその1安打や1勝が大きく影響することは間違いない。一度出したものだからとそのままにせず、記録を精査し、ひとつひとつのプレーを大切にする。こういった点もMLBにある独自の魅力なのかもしれない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)