コラム

プロ野球選手の年俸上昇率はサラリーマンの3倍!繰り返されるマネーゲームに潜む問題点

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今オフの移籍市場で目玉となっていたオリックス・金子千尋投手© KYODO NEWS IMAGES

かつての一流の目安「1億円プレーヤー」は今季90人


 オリックスから国内FA宣言をしている金子千尋に阪神が4年総額20億円超(推定。以下同)の大型契約を提示したとのニュースが飛び込んできた。事前に「マネーゲームはしない」との球団幹部の発言があったはずだが、その中にあっても最大限の誠意を見せた格好だ。

 しかし、気になるのはその高額年俸。誰もが認める球界の大エースとはいえ、金子は11月29日に右肘の手術を終えたばかりで実戦復帰までは3カ月かかる予定。来季開幕には間に合うとはいえ、その回復には不安がつきまとう中、今季の年俸2億円からのジャンプアップだ。

 金子の例を挙げるまでもなく、近年の年俸高騰を感じているプロ野球ファンは多いだろう。今オフに限ってみても、ソフトバンク入団が決まった松坂大輔が3年総額12億円、オリックスが獲得した中島裕之は4年総額15億円と、一昔前には考えられなかった金額で契約が決まっている。しかも、松坂は渡米3年目以降の6年間は不本意なシーズンを送り、中島に至ってはメジャー昇格さえかなわず、実績という点でも「高い」と言わざるを得ない。

 かつての一流選手の目安といえば年俸1億円だが、今季は阿部慎之助(巨人)の6億円を筆頭に、90人もの選手が年俸1億円を上回っていた。1対4の大型トレードで中日に移籍した落合博満(元ロッテ、中日など)が日本人初の1億円プレーヤーとなったのは1987年。当時の支配下公示選手の平均年俸1106万円に対し、今季は3678万円にまで上がった。

 ちなみに、一般のサラリーマンの年収の推移はどうかといえば、落合が1億円の大台に乗った1987年の平均年収は384万円。その後、徐々に上がっていたが、2001年の505万円をピークに減少傾向にあり、現在は約470万円だ。

 1987年と現在を比較すると、プロ野球選手の3.32倍に対し、サラリーマン年収はわずか1.22倍の増加にとどまっている。また、1987年のプロ野球選手の年俸はサラリーマン年収の2.88倍だったが、現在では7.82倍にまで差が広がった。

 それでは、それだけ球団の収入が上がったのかといえばそういうわけでもない。プロ野球中継の放映権料が主な収入源だったセ・リーグ球団は、中継数の減少、視聴率低迷などで2000年以降ほぼ横ばい。また、観客をメインの顧客ととらえた積極的な球団経営を続けてきたパ・リーグ球団の収入は上がっているが、それでもようやくセ・リーグ並みになったというだけだ。


80億円の収入でも20億円の赤字!?


 選手の年俸が上がることは、プロ野球選手を夢見るという側面では素晴らしいことである。が、一方で歯止めの利かないマネーゲームが繰り返されることとなれば、さまざまな問題が噴出することも考えられる。

 先述の松坂獲得に乗り出していたDeNAは、3年総額10億5000万円を提示していたといわれ、それでも十分過ぎるほどの高額年俸だ。しかし、軍配が上がったのは潤沢な資金を誇る日本一チーム・ソフトバンクであった。今さら言うまでもなく、親会社の資金力による戦力格差が広がることは容易に想像できる。

 また、健全経営という視点でも問題だ。例えば、日本一となったほか、メジャーに挑戦した西岡剛の入札金など臨時収入により2010年のロッテは当時過去最高の80億円の収入があったが、それでも20億円の赤字を出したという。それだけ、高騰する人件費が球団経営を圧迫しているのだ。

 球団側としては、このまま親会社の資金補填を受け続けるか、あるいは新たな収入の糸口を見つけ増収を図るか、それともNFLやNBAなどと同様にサラリーキャップ制の導入により人件費の高騰を抑えるか、なんらかの手立てが必要なときがきているのかもしれない。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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