バッテリーと野手で始動日が違う 投球練習は1人10分程度?
2月も半ばを過ぎ、暖かい日が徐々に増えてきた。まさに、球春到来である。日本のプロ野球は2月1日に12球団一斉にキャンプインし、21日からオープン戦が始まっている。
一方、メジャーリーグは20日(日本時間)にようやくキャンプイン。田中将大が所属するニューヨーク・ヤンキース、イチローが所属するマイアミ・マーリンズなど15球団はフロリダ。青木宣親が所属するサンフランシスコ・ジャイアンツや岩隈久志が所属するシアトル・マリナーズはアリゾナ州フェニックス周辺でキャンプを張る。フロリダとアリゾナがメジャーのキャンプ地である。
さて、メジャーの場合、キャンプインといっても一部の球団で、それもバッテリー組だけが先にキャンプを始める。野手陣が合流するまでに、ピッチャー同士で投内連携の練習をするのがメジャー式だ。
メジャーキャンプでの投手の練習法で日本と異なる点はほかにもある。なかでも大きく異なる点はブルペンでの球数だ。日本では1日100球以上や、場合によっては200球以上投げる投手もいるが、メジャーではありえない話である。
キャンプ初日、田中将大はブルペンで21球、藤川球児(テキサス・レンジャーズ)は24球を投げただけで終えた。球数が少ないのはキャンプ初日だからではなく、ブルペンでの投球練習は長くても1人10分程度。球数制限もあり、次から次へと投手が入れ替わる。
今季、広島に復帰した黒田博樹もメジャーのキャンプでは30から40球に制限されていたが、20日の練習では76球を投げ、徐々に日本式に戻していく予定だという。
メジャーの場合、キャンプ中にブルペンに入るのは2、3回程度で、すぐにフリーバッティングに登板する。ほどなくしてオープン戦も始まり、実戦のなかで球数を増やし、感覚を磨いていくという考え方だ。
4~8面もあるグラウンド 自宅で練習できる環境を整える選手も
練習方法の違いは、投手に限った話ではない。
野手も、日本のように夕方まで練習することはなく、午前中にはすべての練習を終え、午後はゴルフをしたり、家族との時間を楽しむ選手もいる。午前中で練習を終える代わりに、朝の早い時間に球場入りし、ウェイトトレーニングなど個人練習に当てるという。日本はいわば「やらせる練習」とも言えるが、メジャーは自主性に任せる部分が多いのだ。また、メジャーでは各球団専用の敷地内に4~8面ほどのグラウンドがあり、一度に多くの選手が練習できるため、練習時間が短くて済むという利点があるようだ。広大なアメリカならではの話だ。
投手同様、メジャーの野手がキャンプイン直後に実戦練習できるのは、ほかにも理由がある。オフの間、中南米の選手はドミニカウインターリーグなどに参加し、実戦から離れることがないからだ。ウインターリーグに参加しない選手でも、自宅にピッチングマシンなどを揃え、いつでも練習できる環境にある場合が多い。往年の名投手、ロジャー・クレメンスは自宅に400メートルトラックがある体育館のようなものを作ったほどだ。これも広いアメリカだからできることだろう。
日本とアメリカのどちらがいいという話ではなく、キャンプひとつをとっても取り組み方にここまで差が出るのはなかなか興味深い。
文=京都純典(みやこ・すみのり)