『俺たちの時代』を語りつくそう~松坂と好勝負演じた90年代強打者ランキング~
松坂大輔(ソフトバンク)が久しぶりに日本でプレーする。「平成の怪物」として西武で活躍後、2006年のオフにポスティングシステムを行使してレッドソックスに移籍。以来、9年ぶりの復帰となる。
とはいえ、2008年にメジャーリーグで18勝を挙げたのを最後に2ケタ勝利から遠ざかり、特に2011年に右ヒジの手術をして以降、アメリカで満足のいく結果を出せずにいた松坂が、一体、どのくらい日本でやれるのか―。疑念を抱いているファンもいることだろう。そもそも、9年ぶりの復帰となれば、日本で投げていたことを覚えていない若い世代もいるかもしれない。
そこで、今回は松坂が日本でプレーしていた当時の名勝負を振り返ろうと思う。1999年のプロデビュー以降、松坂が対戦してきたのは90年代を代表するパ・リーグの猛者どもばかり。そのなかでも、特に印象に残る勝負を演じた強打者をピックアップし、ランキングにして紹介していきたい。
「自信から確信」発言に衝撃!
まず、第3位は新天地・マーリンズでの活躍が期待されるイチローだ。松坂がデビューした1999年は、イチローにとってはプロ8年目。日本一もすでに経験し、5年連続首位打者を継続。この年も当たり前のように首位打者を獲得するまさに球界のスーパースターである。
そんなイチローに対して、松坂は初対決でなんと3打席連続三振を奪う。並みのルーキーとはスケールが違うことを示すとともに、試合後のヒーローインタビューでは「今日の一戦でのピッチングというのは、プロでやっていくうえで自信になったと思いますがどうでしょう?」というインタビュアーの問いに対して「今までいまひとつ自信が持てなかったのが、今日で自信が確信に変わったと思います」と言ってのけた。聞きようによっては失礼なほど自信満々のコメントにも聞こえるが、松坂にとってはイチローがそれだけ偉大な存在だったことを示していた。
続いて第2位は、片岡篤史(元日本ハム他)だ。松坂のデビュー戦で3番打者として打席に入り、155キロを記録した内角高目のボール球を豪快に空振りして三振を喫し、尻もちをついたシーンは有名である。
片岡はPL学園時代に立浪和義(元中日)、野村弘樹(元横浜)、橋本清(元巨人他)らとともに甲子園春夏連覇を果たした後、同志社大で活躍。1991年のドラフト2位で日本ハムに入団し、1年目から活躍していた。右足を派手に上げる一本足打法と、松坂との初対戦で空振りする姿を見て誤解されがちだが、ミートの上手いシュアな打者であり、その後の松坂との対戦ではむしろ好機で打ち込むシーンが多く見られるようになった。
「ガチ勝負」で魅了した中村紀との勝負、再戦は…?
そして、第1位は中村紀洋(前DeNA)を選んだ。中村は1991年にドラフト4位で近鉄に入団すると、翌年には早くも1軍デビューを果たし、思い切りの良いスイングで1994年にはレギュラーとして定着。松坂がデビューした1999年は、近鉄が誇った「いてまえ打線」の中軸としてゴールデンルーキーの挑戦を迎え撃ち、その後も得点や走者の状況などをほぼ無視してインパクトのあるガチ勝負を何度も演じている。
中村は松坂から通算9本の本塁打を放っているが、2001年に近鉄がパ・リーグ優勝を決める2日前の試合で打ったサヨナラ本塁打は、松坂にとって生涯初のサヨナラ被弾だった。
昨オフにDeNAを退団して以来、現役続行を希望して他球団からのオファーを待っているが、3月になった今も獲得情報はなく、引退の危機に追い込まれている中村。今となっては数少ない松坂と名勝負を演じた現役打者だけに、その再戦を見てみたいものだが、果たして実現はあるのだろうか。
文=キビタキビオ(きびた・きびお)