コラム

ヤクルトの強さが「フロック」ではない理由

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防御率リーグ1位のヤクルトの石山泰稚©BASEBALLKING
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19試合のうち16試合が2失点以内!


 開幕から3週間あまり。セ・リーグでは下馬評の低かったヤクルトと中日が首位を争い、逆に優勝候補の一角と見られていた広島が最下位に沈むなど、多くの予想を覆す状況になっている(4月19日終了時点)。

 特に目を引くのが首位のヤクルトだ。ここまでのチーム防御率1.66は、12球団唯一の1点台。昨季のチーム防御率が12球団ダントツ最下位の4.62だったことを思えば、たとえFAで成瀬善久が加入したとはいえ、この驚異的な数字は誰も予想できなかっただろう。

 開幕前、稀にヤクルトの躍進を予想する声があったとしても、打線が昨季同様の破壊力を発揮し、かつ由規、館山昌平が早いうちに復帰したならあるいは……といった条件付きで、消極的なものがほとんどであった。

 ところが、ふたを開けてみれば昨季12球団トップの667点をたたき出した打線はあまり元気がない。総得点61は、最下位争いをしている広島、阪神に次ぐリーグワースト3位だ。一方、投手陣の奮闘ぶりは凄い。19試合のうち16試合を2失点以内に抑え、安定した試合運びに大きく貢献している。
 
 セ・リーグの個人防御率ランキングでは、石山泰稚、小川泰弘がそろって0点台でトップ争いを繰り広げ、石川雅規も1.73で上位に食い込む。それぞれが既に3、4試合に先発していることを考えれば、上下動の激しい開幕直後ならではの数字では片付けられないだろう。


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新球・シュートにより石山の直球被打率が大きく改善


 中でも注目は3年目を迎えた石山だ。防御率0.43は2位の同僚・小川の0.64を抑え、セ・リーグトップ。今季はここまで3試合に先発し、21投球回で自責点はわずかに1。昨季の防御率が4.53だったことを思えば、今季の投球内容に大きな変化があったことがうかがえる。

 その変化は、今季からの新球・シュートにある。もともと石山の武器は伸びのある直球だ。平均球速は141キロ程度と決して速球派とはいえないが、高津臣吾投手コーチには「ストレートはチーム屈指」と評されるほど質は高い。

 ただ、昨季はその直球を狙い打たれ、球種別の被打率では.310を超えていた。今季は、直球と同じ軌道から小さく曲がるシュートを持ち球に加えたことで打者を幻惑。より効果的に直球を生かせるようになった。さらに、今季の石山はとにかく丁寧に低めにボールを集めている。結果的に、ここまでの直球被打率はわずかに1割程度と、昨季と比較して大きく改善された。

 4月15日の広島戦、7回2死1、2塁のピンチで菊池涼介を迎えると、スライダーを投げようと直球のサインに首を振る石山に対し、捕手・中村悠平は再び直球を要求したという。結果、右飛に打ち取り石山は7回無失点で勝利投手になった。シュートをものにしたことで、痛打されていたストレートを投球に生かせるようになったことを裏付けるシーンだったと見ることができる。
 
 先発の「軸」に名乗りをあげるほどの投球を見せる石山。石川、成瀬の両左腕に小川、杉浦稔大の4人は早々にローテーションが確定していたが、実は、これだけ安定している石山がチームの「5番手扱い」だという点がポイントかもしれない。厚い選手層を誇るチームであっても5、6番手の投手の起用には苦労するもの。そう思えば、今季のヤクルトの強さにも納得である。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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