コラム 2015.05.07. 11:15

ヤクルト投手陣を支えるいぶし銀 “真面目でひたむき”徳山武陽の球歴とは?

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ヤクルト投手陣をしぶ~く支える徳山武陽の球暦とは… ©BASEBALLKING
徳山武陽 ,

『名門大学卒の元育成選手』


 2013、2014年と2年連続最下位に沈んだヤクルト。昨年はチーム打率.279とリーグ1位ながら、チーム防御率4.62はダントツ最下位。12球団でも最低の数字で、投手陣の責任が大きく問われる一年となった。

 今春キャンプでは、奮起した投手陣全員が初日からブルペン入り。開幕から約1カ月が過ぎ、連休も終えた現在(5月6日終了時点)、チーム防御率は2.38と12球団で2番目の数字を誇る。

 3年目のライアン小川泰弘やベテランの石川雅規、石山泰稚ら先発陣が奮闘を見せる中、しぶ~く活躍を見せているのが育成出身の中継ぎ右腕・徳山武陽である。

 今シーズンは中継ぎとして12試合(14イニング)で奪三振15と、イニング数以上の三振を奪取し、防御率は1.93と大健闘しているのだ。

 徳山は1989年7月生まれ、兵庫県出身。今年26歳を迎える。

 小学生のとき、友達に誘われて野球を始め、中学、高校と野球部に所属。三田学園高校ではエース・4番・主将としてチームを引っ張った。

 しかし、3年夏は4回戦敗退で甲子園には届かず。兵庫県代表となったのは、三田学園高がある三田市出身の2年生エース・近田怜王(ソフトバンク→JR西日本)を擁する報徳学園高校だった。

 当時のあらゆる野球雑誌を広げてみても、徳山武陽の名前はどこにも見当たらない。兵庫県内では2年生の近田、近畿まで範囲を広げれば、投打の怪物・中田翔(大阪桐蔭高→日本ハム)に注目が集まっていた。

 全国的には、中田と唐川侑己(成田高→ロッテ)、現在のチームメートである佐藤由規(仙台育英高/現登録名・由規)が「高校生BIG3」として話題をさらっており、それぞれドラフト1位でプロ入りを果たしている。
 
 高校卒業後は、関西学生野球連盟に所属する名門・立命館大学に進学。1年秋からリーグ戦で登板するも、2年生のとき、野球人生最大というスランプを経験。そのときの様子を当時の松岡憲次監督が振り返ったものが、立命館大の広報誌に残っている。

 「スランプに陥ったときも、一人黙々と1球1球修正していた姿が印象的でした」。真面目な性格で、「どちらかと言うと目立たない存在」だったというが、「彼の良いところは、自らを律し、何事に対してもコツコツと取り組むところです」とも。

 地道な努力が実り、エースとして復活。4年秋は、7試合に登板して6勝1敗(5完投)。防御率0.78とリーグトップの成績をマークした。なお、同シーズンの投手成績10位には、京都大学・田中英祐(現・ロッテ)の名前がある。

守護神につないていく1イニングと向き合う...


 迎えた2011年秋のドラフト。阪神、巨人などがリストアップしていたとされるが指名はなく、ヤクルトが育成ドラフト1位で指名。名門大学で結果を残しながらの“育成枠”に思うところもあっただろうが、「名前を呼ばれた瞬間、まずホッとしました」とコメント。「野球を続けたい」という思いをかなえ、プロ野球選手への道を歩み出した。
 
 1年目の2012年は支配下登録されず、イースタンリーグで13試合(58回)に投げて5勝2敗。2年目の2013年5月13日に支配下登録されると、2日後、5月15日の西武戦でプロ初先発。しかし、初回、浅村栄斗に先頭打者ホームランを打たれ、「初先発で初回の先頭打者にホームラン」という史上初の事例を作ってしまった。

 2013年は5試合に登板(うち先発4試合)して0勝2敗。プロ初勝利は翌2014年9月3日の中日戦。内緒で球場を訪れていた母親を、「ヒーローインタビューのとき、めっちゃ泣いている人がスタンドにいて、よく見たら母親でした」とお立ち台から発見するという、心温まるエピソード付きだった。

 一軍での勝利はその1勝のみ。それでも、真中満監督は昨秋キャンプでのMVPとして徳山の名前をあげ、今季のブレークを期待。徳山自身も「守備も投球もこだわって取り組み、手応えを感じています」とローテーション入りに意欲を燃やした。

 今春のキャンプでは、プロ入り後に封印した両打ちの解禁を宣言し、左右での打撃練習も披露。高校通算20本塁打の打撃力も含めて、先発としてやれる姿をアピールした。

 ところが、今季は初登板となった開幕2戦目から、主に1イニングを任される中継ぎとして役割を果たすことに。4月19日のDeNA戦、荒波翔に一発を浴びて自責点がつくまで7試合で防御率0.00をキープ。首位争いをするチームを、先発陣と共にしっかり支えてきた。

 今後の起用は、このまま中継ぎか、あるいは先発転向もありか。どちらであっても、その性格のままひたむきに、そしてどこまでも真面目にコツコツ投げ続けるに違いない。

 母校・立命館大の学園通信には、「野球はチームプレーです」という徳山の言葉が残っている。常にチームの勝利を考えて投げていたというエースの心は、プロになっても変わらない。

 どんな起用にも応じて投げ抜く――。昨年のリベンジを果たすべく奮闘するヤクルト投手陣には、そんな男がいるのだ。

文=平田美穂(ひらた・みほ)

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