“アクティブ・ロースター”25名が全員ベンチ入りするMLB
ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が、右前腕部の張りと右手首の腱炎のため、15日間の故障者リストに入っている。
ここまで4試合に登板し、2勝1敗、防御率3.22。昨年7月に右ヒジ靱帯の部分断裂で保存治療を選択した田中は、リハビリを経て復帰。開幕から徐々に調子を上げていただけにショッキングなニュースだった。最低でも約1ヵ月の戦線離脱となる見込みだ。
田中の早期復帰とケガが重症化しないことを祈るばかりだが、MLBの報道でよく見聞きする故障者リストとは一体どういったものだろうか。登録枠との関係も含めて、日本と比較しながら説明してみたい。
日本は一軍登録が最大28人で、その中から25人を毎試合ベンチ入りメンバーとして登録する。一方で、MLBで一軍登録にあたるのが“アクティブ・ロースター”。そこに登録されている25人がベンチ入りし、試合に出場することができる。
日本では登板予定のない先発投手が一軍登録されていながらもベンチから外れることもあるが、MLBではロースターに登録されている全選手がベンチ入りする。また、9月1日以降はロースターの枠が40人まで拡大され、来季以降の戦力として期待される若手がそこに登録されることもある。
今回のテーマである故障者リストには、「15日間」と「60日間」の2種類がある。今回の田中や岩隈久志が入っているのは15日間の故障者リストだ。
アクティブ・ロースター25人が埋まっていないと故障者リストは使えないため、リストに入れる選手の代わりに、別の選手をロスターに入れる必要がある。また、故障者リストに入った選手はロースターの人数にはカウントされず、試合には出場できないが、ベンチ入りは可能だ。
一軍登録を外れた選手がベンチ入りできない日本との大きな違いがある。
メジャーの登録枠に関するルールは非常に複雑……
テキサス・レンジャーズのダルビッシュ・有投手が入っている60日間の故障者リストは、アクティブ・ロースターだけではなくメジャー契約枠の40人からもカウントされなくなる。そして、60日間の故障者リストを使うときは、必ず別の選手とメジャー契約しなければならない決まりとなっている。
一方で、15日間か60日間の故障者リストに入ったいずれの選手も、マイナーの試合に出場して調整することは可能だ。
日本では、最大70人の支配下登録枠の選手なら、誰でも自由に一軍登録をすることができる。しかし、MLBではアクティブ・ロースターに登録されている25人をメジャー契約40人の枠と自由に入れ替えることはできない。
このことに関するルールは非常に複雑だが、そのなかのひとつに「メジャー在籍5年以上の選手は、一度25人枠に入ると40人枠に入ったままマイナーに降格させることはできない」というルールがある。
つまり、多くのベテラン選手は25人枠からかんたんに外すことができないのである。日本からMLBに移籍する選手がメジャー契約にこだわる裏側には、こういった理由も存在するのだ。
“契約社会”ともいわれるアメリカ――。選手登録に関する様々なルールからもそういったことを垣間見る見ることができる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)