成長途上!? 新天地で見せるイチローのスゴさ
イチローがまたしてもチームの勝利に貢献した。3試合ぶりに生まれたヒットはなんと勝利を決定づける今季初アーチ。9試合連続先発出場を果たした29日(現地時間)のメッツ戦で、イチローは1点リードの8回裏に3ランを放ち、球場のファンは総立ちで41歳のナ・リーグ“ルーキー”に拍手を送った。
イチローは正左翼手の故障によって空いた穴を埋めるだけではなく、それ以上の結果を残し続けている。今季、チームはイチローが先発した試合で9勝4敗という好成績を残しており(ベンチスタートの試合では1勝8敗)、イチローの存在がチームを上昇気流に乗せたといっても過言ではないだろう。チームは今月21日の時点で8あった借金を一気に2つまで減らすことに成功している。
マーリンズ打線もイチロー先発時は1試合平均得点5.2(それ以外では同3.3)と、イチローの先発起用時は2点近く多くの得点を奪っている。イチロー自身の打率は現在.263だが、打線の活性化はイチロー効果といってもいいだろう。
29日の今季1号はメッツの中継ぎ左腕トーレスから放ったもの。ヤンキース時代の昨年なら右の代打を送られていてもおかしくない場面だったが、そのまま打席に立ったのはマーリンズ首脳陣の信頼を得ている証拠。これで今季の対左投手打率を.385(13打数5安打)に引き上げ、今後も投手の左右関係なく先発起用は続くだろう。
今季のイチローのスゴさは他にもある。全投球に対する空振り率はキャリアベストの僅か2.4%。野球統計サイトのファングラフによると、2002年以降の通算は5.1%。昨年は自己ワーストの7.0%だった。今年は昨年の3分の1程度まで“空振り”を大幅に減らしている。
さらに守備でもその範囲の広さを見せつけている。特定選手が“1試合平均(9イニング換算)でいくつのアウトに関与したか”を示すRange Factor(レンジファクター)で、今季イチローは外野手として2.23をマーク。これは自身の通算2.21をも上回る。2010年の2.26を最後に1点台が続いていたが、守備範囲という点で5年前の水準まで数字を戻しているのだ。
オリックス時代も含め、イチローはチームがどれだけ低迷しても、手を抜くことなく背中でチームを引っ張ってきた。若手に交じって明るい表情が増えた今季のイチローだが、「その時やるべきことをしっかりやる」姿勢は変わらない。この“イチローイズム”が若いチームに植え付けられたとき、マーリンズはとてつもない力を発揮するのかもしれない。