3試合16イニング強ですでに被本塁打が5本
マリナーズの岩隈久志が勝てない。
勝ち投手の権利を持ったまま降板し、リリーフが打たれた試合もあったが、ここまで3試合に登板し0勝1敗、防御率6.61。1イニングあたりに許した走者の数を示すWHIPは、昨季アメリカン・リーグで4位のWHIP1.05を記録したが、今季は1.41と0.4近く上がっている。昨季と比べれば雲泥の差である。
初登板となったエンゼルス戦では、プホルスに高めに浮いたスライダー。2戦目のドジャース戦ではゲレーロとイーシアーにいずれもスライダーを打たれた。3戦目のアストロズ戦ではバルブエナに真ん中寄りに入ったシンカーを打たれ、5回にもラスマスに抜けたシンカーを右中間スタンドに運ばれた。
振りかえってみれば、本塁打を打たれたのはいずれも高めに浮いた変化球である。昨季は速球、変化球ともに低めへ集め、おもしろいようにゴロを打たせていた岩隈からは想像できないピッチングとなっている。
昨季の投球間隔はワースト9位、不調の裏に“新ルール”あり?
制球力以外にも気になる点がある。
3試合目の登板となったアストロズ戦では、過去2試合と比べて球速が約2マイル(約3.2キロ)ほど落ちているのだ。いわゆるフォーシームもほとんど投げず、変化球中心にピッチングだった。
悪いことは重なるもので、岩隈は25日に広背筋の張りで15日間の故障者リスト(DL)に入った。MRI検査の結果、幸いにも症状は軽症であることが報告されているものの、復帰には2週間~4週間ほど要する見込みであると診断されている。
またもうひとつ、岩隈の不調に関係していると考えられるのが投球間隔だ。
今季から、試合時間の短縮に向けたルールが本格的に導入されたメジャーリーグ。イニング前の投球練習の時間制限から攻守交代に関するところまで、様々な時短策が導入され、今後もその施策は広がっていく予定となっている。
その中でも特筆すべきものが、投手の「20秒ルール」。走者がいない時、投手は捕手の返球を受けてから20秒以内に投げなければならないというもので、これはマイナーリーグで試験的に行われた後、2016年にもメジャーで導入される見込みとなっている。
昨季、岩隈の投球間隔は平均24.7秒でメジャーワースト9位。今季は平均24秒前後と若干改善してきているものの、「早く投げなければならない」という意識が、マウンドでの感覚を狂わせている可能性は大いにある。
速球で押していくわけではなく、制球力で勝負するタイプの岩隈は、ピッチングの間合いをより重視するのではないか。些細なことかもしれないが、制球力も含めて、岩隈がどのようにアジャストしていくか。ケガの早期回復を祈りつつ、岩隈がどのように調子を上げていくか見守りたい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)