周囲の予想を遥かに上回るスピードで成長を続ける強打者
現在、パ・リーグ首位に立つ西武(5月10日終了時点)。チーム防御率3.08と安定した投手陣のほか、打線も好調。チーム打率.261はソフトバンクと並びリーグトップの数字である。
中でも目を引くのが森友哉だ。昨季、高卒ルーキーとしていきなり6本塁打を記録し球界の話題をさらったが、今季は早くも昨季を上回る7本塁打を記録している。
フルスイングで長打を量産し、12二塁打はリーグトップ、長打率.587は李大浩(ソフトバンク)に次ぐ2位と、あどけなさの残る19歳は周囲の予想をはるかに上回るスピードで成長し続けている。
プロ入り即活躍した高卒野手といえば、西武ファンならずともまず思い浮かべるのが清原和博(元西武ほか)だろう。高卒1年目の清原が記録した31本塁打は、大卒、社会人出身者も含めた新人最多記録であり、野球ファンの間では今なお伝説として語り継がれている。
苦手なソフトバンクと日本ハム投手陣を攻略できるか?
その清原と森の成績を比較すると、興味深い結果が出た。1本の本塁打に必要な打席数をはかる本塁打率を見てみたい。1年目の清原は471打席31本塁打で本塁打率は15.19。一方、昨季の森は92打席6本塁打、本塁打率15.33。
森は捕手ゆえに、1年目からレギュラーを奪うにはあまりにハードルが高いポジション。よって、打席数が少なかったがために、本塁打数自体は清原に遠く及ばなかったものの、昨季の森は、清原となんら遜色のないハイペースでホームランを放っていたということである。
同様に、2年目の清原と今季の森を比較してみよう。清原は536打席29本塁打で本塁打率18.48。森はここまで133打席7本塁打で本塁打率19.00。やはり清原にはわずかに及ばないものの、球界の“レジェンド”と堂々と肩を並べる数字だ。
しかし、そんな森にも弱点はある。今季ここまでの球団別対戦成績を見ると、オリックス戦や楽天戦では4割近い打率を残している一方、ソフトバンクが相手だと.227。昨季もソフトバンクは苦手としており、対戦打率は.176だった。
また、首位争いを繰り広げている日本ハムも森は比較的苦手としている。日本ハム戦は、昨季、今季ともに、ソフトバンク戦に次ぐワースト2位の対戦打率である。今週はそのソフトバンク、日本ハムとの対戦カードが組まれている。
将来は間違いなく、いや既にチームの主軸を担っている森だが、上位球団、そしてその上位球団にいる力のある投手を打ち砕いてこそ、“本物の中の本物”になるというもの。
森がどんな打棒を見せてくれるか、今週の試合をじっくりと観戦してみたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)