コラム 2015.06.05. 10:25

プロ7年目の「眠れる大器」が覚醒の時! 和製大砲・中川大志の球歴とは?

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大久保博元監督(右)と抱き合って喜ぶ楽天の中川大志(左)© KYODO NEWS IMAGES
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交流戦で大爆発の和製大砲!


 開幕から下位に低迷し、交流戦をキッカケに浮上したい楽天。最初の阪神戦で3連敗するも、続く巨人戦では9年ぶりとなる勝ち越しに成功。5月31日の第3戦は、エースの則本昂大から、若き守護神・松井裕樹へとつなぐ必勝リレー。3対3で迎えた延長10回裏、劇的なサヨナラホームランで勝利を決めた。

 殊勲のサヨナラホームランを打ったのは、7年目の中川大志。1990年6月8日生まれで、この日、先発した則本と同い年。ホームベース付近でもみくちゃにされ、大久保博元監督と抱き合った後のお立ち台では、「今日はノリ(則本)が先発で絶対に勝ちたかったので、ホームラン打てて良かったです!」と笑顔がはじけた。さらに、6月4日のヤクルト戦では4番に座ると、2回の第1打席でライトスタンド、4回の第2打席でレフトスタンドと、2打席連続ホームラン。交流戦2カード連続勝ち越しに大きく貢献。大久保監督は「打った場面も、打ち方も満点!」と絶賛した。
 
 中川は、愛知県豊橋市出身。父親が野球指導者で、2歳上の兄が野球をやっていたこともあり、小学1年からボーイズリーグに加盟する硬式クラブ「新城ベアーズ」に入団した。小学校卒業後は、豊橋市にある私立の桜丘中学校へ。中学校の野球部の多くは軟式だが、同校野球部は硬式でボーイズリーグに加盟。中川は、主に投手と三塁手を務めていたという。なお、全国にはいくつかの中学硬式野球部があり、日本中学校体育連盟ではなく、各硬式野球連盟に加盟して活動している。リトルシニア連盟に所属する「青森山田シニア」は、青森山田中学校の硬式野球部である。
 
 中学卒業後は、父親が監督を務め(中川が1年時に勇退)、兄がいた桜丘高校へ。1年から4番に座り、エースとしてマウンドに立つチームの大黒柱だった。投げては144キロのストレート、打っては高校通算32本、通算打率.429。甲子園には届かなかったが、恵まれた体格とあふれ出る才能は、早くからプロの注目を集めていた。

 当時のデータによると、身長185センチ、体重89キロ、背筋力270キロ、握力は左右とも65キロ、遠投110メートル、50メートル走6秒3。「群を抜くスイングスピードからの打球は他の選手と明らかに違う」「ボールを呼び込んで打てるので柔軟な対応ができる」といったコメントが専門誌に並んでいる。なお、同じ愛知県内の注目選手として、小川泰弘(成章高→創価大→ヤクルト)、福谷浩司(横須賀高→慶應義塾大→中日)の名前がある。東海地区に範囲を広げれば、西勇輝(三重・菰野高→オリックス3巡目)、伊藤準規(岐阜城北高→中日2巡目)といった逸材がいた。
 
 2008年秋のドラフト2巡目で楽天が指名。記者会見では「プロは子どもの頃からの夢でした。本当にうれしいです。将来はクリーンアップを任される選手になりたいです」と笑顔。仮契約時には、「プロに行っても、自分らしく元気いっぱいプレーしたい。山崎武司さんのように、日本を代表するバッターになりたいです」と話した。


右ヒザ手術、単身武者修行…、努力が花開く2015年!


 未来の和製大砲候補として期待されてのプロ入り。ファームでじっくり育成されることになり、一軍初出場は2年目の2010年。7試合に出場し、初安打と初打点を記録した。翌2011年は、イースタンリーグ打点王、優秀選手を獲得。いよいよ覚醒かと思われたが、12月に右ヒザじん帯損傷により手術。リハビリに専念するため、2012年は育成選手としての契約となった。
 
2013年は支配下登録選手に復帰。二軍で99試合に出場して打率.303。イースタン打点王(71打点)、ホームラン王(15本)を獲得した。復活をめざす中川を、二軍監督として見守り、打撃指導をしていたのが、現在一軍を率いる大久保監督。サヨナラホームランでの熱い抱擁には、そんな理由もあったのだ。

 昨年は一軍で1試合出場。二軍では99試合に出場するも、打率.238、ホームラン7本と成績が低下した。シーズン終了後の11月、自らの意思で単身、オーストラリアのウインターリーグに参加。約2カ月にわたる武者修行で自分のプレーを見つめ直し、持ち味のフルスイングを貫くことを決意したという。

 心機一転、迎えた今季。5月4日に一軍昇格を果たし、6日の日本ハム戦では、一軍初の長打となるタイムリー二塁打を放った。そこから出場を重ね、9日のソフトバンク戦で3割に乗せると、一時は4割を超える高打率をマーク。その後も規定打席未到達ながら3割台をキープ。試合後にはティー打撃でスイングを確認する姿を、「とにかく野球が大好きな人間。そこに技術がついてきた」と大久保監督も評価する。

 外国人選手が思うような結果を残せず「純国産打線」も組む楽天にとって、のどから手が出るほど欲しい和製大砲。このまま中川がレギュラー定着、クリーンアップに座って活躍を続ければ、チームは下位から浮上、上位進出も見えてくる。

 昨年までのプロ6年間で、一軍出場11試合、3安打、2打点、0本塁打、打率.094。長く深く眠っていた能力が覚醒する姿を、まずは交流戦でしっかりと見せてほしい。

文=平田美穂(ひらた・みほ)

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