交流戦で大爆発の和製大砲!
開幕から下位に低迷し、交流戦をキッカケに浮上したい楽天。最初の阪神戦で3連敗するも、続く巨人戦では9年ぶりとなる勝ち越しに成功。5月31日の第3戦は、エースの則本昂大から、若き守護神・松井裕樹へとつなぐ必勝リレー。3対3で迎えた延長10回裏、劇的なサヨナラホームランで勝利を決めた。
殊勲のサヨナラホームランを打ったのは、7年目の中川大志。1990年6月8日生まれで、この日、先発した則本と同い年。ホームベース付近でもみくちゃにされ、大久保博元監督と抱き合った後のお立ち台では、「今日はノリ(則本)が先発で絶対に勝ちたかったので、ホームラン打てて良かったです!」と笑顔がはじけた。さらに、6月4日のヤクルト戦では4番に座ると、2回の第1打席でライトスタンド、4回の第2打席でレフトスタンドと、2打席連続ホームラン。交流戦2カード連続勝ち越しに大きく貢献。大久保監督は「打った場面も、打ち方も満点!」と絶賛した。
当時のデータによると、身長185センチ、体重89キロ、背筋力270キロ、握力は左右とも65キロ、遠投110メートル、50メートル走6秒3。「群を抜くスイングスピードからの打球は他の選手と明らかに違う」「ボールを呼び込んで打てるので柔軟な対応ができる」といったコメントが専門誌に並んでいる。なお、同じ愛知県内の注目選手として、小川泰弘(成章高→創価大→ヤクルト)、福谷浩司(横須賀高→慶應義塾大→中日)の名前がある。東海地区に範囲を広げれば、西勇輝(三重・菰野高→オリックス3巡目)、伊藤準規(岐阜城北高→中日2巡目)といった逸材がいた。
右ヒザ手術、単身武者修行…、努力が花開く2015年!
未来の和製大砲候補として期待されてのプロ入り。ファームでじっくり育成されることになり、一軍初出場は2年目の2010年。7試合に出場し、初安打と初打点を記録した。翌2011年は、イースタンリーグ打点王、優秀選手を獲得。いよいよ覚醒かと思われたが、12月に右ヒザじん帯損傷により手術。リハビリに専念するため、2012年は育成選手としての契約となった。
昨年は一軍で1試合出場。二軍では99試合に出場するも、打率.238、ホームラン7本と成績が低下した。シーズン終了後の11月、自らの意思で単身、オーストラリアのウインターリーグに参加。約2カ月にわたる武者修行で自分のプレーを見つめ直し、持ち味のフルスイングを貫くことを決意したという。
心機一転、迎えた今季。5月4日に一軍昇格を果たし、6日の日本ハム戦では、一軍初の長打となるタイムリー二塁打を放った。そこから出場を重ね、9日のソフトバンク戦で3割に乗せると、一時は4割を超える高打率をマーク。その後も規定打席未到達ながら3割台をキープ。試合後にはティー打撃でスイングを確認する姿を、「とにかく野球が大好きな人間。そこに技術がついてきた」と大久保監督も評価する。
外国人選手が思うような結果を残せず「純国産打線」も組む楽天にとって、のどから手が出るほど欲しい和製大砲。このまま中川がレギュラー定着、クリーンアップに座って活躍を続ければ、チームは下位から浮上、上位進出も見えてくる。
昨年までのプロ6年間で、一軍出場11試合、3安打、2打点、0本塁打、打率.094。長く深く眠っていた能力が覚醒する姿を、まずは交流戦でしっかりと見せてほしい。
文=平田美穂(ひらた・みほ)