日本時間あす4日(土)、ヤンキースの田中将大がチーム、そしてファンの信頼を取り戻すべく先発マウンドにのぼる。
1ゲーム差以内に4チームがひしめく大混戦となっているア・リーグ東地区で、現在首位タイのヤンキースが取り残されないためには、田中の完全復活が必要不可欠だ。
相手はヤンキースを1ゲーム差で追うレイズ。一時は首位を快走していたが、6月21日以降の11試合で2勝9敗と失速中だ。
この間の1試合あたりの平均得点は2.45と打線は湿りっぱなしで、最近2試合で6本塁打を浴び、再び肘の状態に不安の声が挙がりはじめている田中にとっては願ってもない相手といえるだろう。
レイズの先発は、田中と“同世代”にあたる1988年生まれのアーチャー。今季10勝目を懸けたマウンドとなる。
ヤンキース戦に強いのが特徴で、過去通算7試合に先発して5勝0敗、防御率2.02と好成績を残している。さらにヤンキース打線も最近4試合で6得点と調子が悪く、アーチャーを打ち崩すのは容易ではない。
今季の田中は、良い意味でも悪い意味でも安定感に欠けている。
開幕から2試合は9イニングで9失点と大きな不安を抱えてのスタートとなったが、その後の2試合は13回1/3を1失点と復活を予感させた。
ところが、直後に故障者リスト(DL)入り。1か月以上戦列を離れるも、復帰後の3試合は21イニングを4失点に抑える快投を続け、かと思えば最近2試合は計6発を浴びる大乱調。地元ニューヨークでは新たな先発投手獲得の報道が出るなど、田中に対する懐疑的な見方が広がっている。
苦しむ要因のひとつに、田中の“球速”が挙げられる。野球統計サイト「Fangraphs」によると、田中の今季各試合ファストボール(速球)の平均球速は以下の通りだ。
・4月 6日 90.3マイル(約145キロ)
・4月12日 90.6マイル(約146キロ)
・4月18日 90.4マイル(約145キロ)
・4月23日 90.6マイル(約146キロ)
< DL入り >
・6月 3日 92.7マイル(約149キロ)
・6月 9日 92.6マイル(約149キロ)
・6月15日 92.7マイル(約149キロ)
・6月21日 91.1マイル(約147キロ)
・6月27日 91.7マイル(約148キロ)
キロ換算で見ると大きな違いがないように思えるが、マイルで見たときの最近2試合の球速は、復帰後3試合に比べ1マイルほど落ちていることが分かる。DL入り前ほどではないが、肘に何らかの違和感を覚えている可能性は否定できない。
また、今季は開幕から徹底して縦・横に“動くボール”を多用しているが、「ゴロ・フライ比率」の変遷からも、最近2試合の乱調の要因が見えた。以下の数値はフライひとつにつき、ゴロがいくつあったかを示している。
・開幕後4試合 0.88
・復帰後3試合 2.29
・直近の2試合 0.82
21イニングを4失点に抑えていた『復帰後3試合』は、速い球を生かしつつ、多くのゴロを打たせることで結果を残していた。しかし『直近の2試合』はフライの比率が増え、多くの長打につながっている。
あすのレイズ戦で再び打ち込まれれば、ニューヨークメディアは田中に「エース失格」の烙印を押す可能性が高い。田中にとってそれくらい重要な試合になる。
ポイントは、「速球が150キロ前後を常時計測できるか」と、「ゴロを多く誘発させることができるか」。そのあたりにも注目しつつ、田中が完全復活する姿を待ちたい。