被本塁打急増の要因は、「ゴロ打球の減少」にあり
テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有がトミー・ジョン手術を受け、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大は右腕の違和感でしばらくの間戦列を離れた。オールスターのファン投票で4位だったサンフランシスコ・ジャイアンツの青木宣親もケガで故障者リスト入りするなど、今季の日本人メジャーリーガーはどうもケガに泣かされている。
開幕直後に右広背筋を痛め、未勝利のまま故障者リスト入りした岩隈は、7月6日のデトロイト・タイガース戦で復帰登板を果たした。しかし、メジャー自己ワーストの4本塁打を浴びるなど6回途中まで投げて8安打6失点と勝利を挙げることはできなかった。
11日のロサンゼルス・エンゼルス戦で8回3安打6奪三振、無失点の好投でようやく今季初勝利。しかし、今季の通算は2勝1敗、防御率4.89。35回を投げ、被本塁打10本と精彩を欠いている。
不振の一因として考えられるのは、ゴロを打たせることが少なくなったことにある。
昨季の岩隈は、ゴロとフライの比率が1.75とゴロを打たせる割合が高かった。それが今季は1.29とゴロ打球の割合が低くなっている。また、相手打者が引っ張った打球が昨季は42.7%、流した打球が23.5%だったが、今季は引っ張った打球が52.1%、流した打球が15.6%と、引っ張った打球の割合も高くなっている。引っ張った強い打球やフライの打球を打たれる割合が高くなったことが、被本塁打の増加にもつながっているのだろう(データは7月18日登板以前のもの)。
ただ、11日の登板ではゴロアウトが10、フライアウトが3と岩隈本来のゴロを打たせるピッチングが垣間見えたことは光明であるし、後半戦につながるものだと見たい。
主力選手がトレードされることも当たり前なMLB
ところで、「岩隈が近々トレードされるのではないか……」という報道がここ数週間ほど流れている。
日本ではシーズン中のトレードは少ないが、メジャーでは頻繁だ。とくに、選手をウェーバーにかけず自由にトレードできる期限の7月31日が近くなると、一気に騒がしくなる傾向がある。というのも、レギュラーシーズンが終盤に差し掛かると、プレーオフに進出する可能性がほとんどなくなるチームが出てくる。そういったチームの主力選手と、プレーオフに進出する可能性が高いチームの若手選手のトレードが多くなるためだ。期限ギリギリに行われる駆け込みのトレードは「フラッグシップ・ディール」と呼ばれている。
これまでの岩隈の実績を考慮すれば、仮にトレードに出されたとしても、マリナーズに必要ないと判断されたわけではなく、相手チームに求められての移籍と考えるのが妥当である。マリナーズは現在42勝49敗で、アメリカン・リーグ西地区の4位。ワイルドカード争いでも7ゲーム差つけられていて、プレーオフ進出は厳しい状況となっている。
果たして、岩隈は新たなチームへ移籍するのか否か――。マリナーズに残るにせよ、他チームに移籍するにせよ、前半戦最後の登板のようなピッチングができれば十分な戦力として機能するはずである。
文=京都純典(みやこ・すみのり)