独走ソフトバンクを追う若き守備の要!
「強い」ソフトバンクを追いかける一番手・日本ハム。栗山英樹監督が打ち出すチームカラーのひとつが「スピード」である。それを体現するプレーを見せているひとりが、1番・ショートの中島卓也。2番・セカンドの田中賢介と二遊間を組み、盗塁王を争う9番・レフトの西川遥輝との「9、1番コンビ」で点を奪う。
中島は、福岡県糟屋郡宇美町出身。1991年1月生まれの24歳で、プロ7年目。1990年生まれの選手と同学年にあたる。中学時代は、九州を中心に活動するフレッシュリーグ(硬式)の宇美スターズに所属していた。
福岡県立福岡工業高校では三嶋一輝(現・DeNA)と同級生で、3年春の九州大会優勝。しかし、同校初の栄冠を勝ち取った原動力と評価されていたのはあくまでもエース・三嶋。その豪速球と鋭い変化球に詰まった打球を黙々とさばいていた、華奢でセンス抜群のショートが中島だった。甲子園を狙える県立高校として注目を浴びた福岡工業高だが、3年夏の県大会は5回戦で、二保旭(現・ソフトバンク)がエースの九州国際大学付属高校に敗退。激戦の県大会を制して甲子園出場を果たしたのは、エース・辛島航(現・楽天)が率いる飯塚高校だった。
迎えた2008年秋のドラフトで、中島は日本ハムの5位指名を受ける。この年、福岡県内の高校からは、辛島が楽天の6位、二保がソフトバンクの育成2位、福岡工大城東高校のエース・笠原将生が巨人の5位と、4人がプロ入り。当時の野球専門誌を調べてみても、日本ハム・岩井隆之スカウトの「隠し玉」だったという中島卓也の名前は見当たらない。なお、三嶋は東京六大学の名門・法政大学に進学。4年後の2012年秋のドラフトで、DeNAの2位指名を受ける。
課題の打撃を克服して、スター選手への道を歩む!
プロ1年目、2年目ともに一軍出場はなくイースタンリーグで実戦経験を積んだ中島。2011年、3年目にして一軍で初出場。代走、守備固めとして、8試合で1打数0安打、1盗塁。初安打より先に初盗塁を決めているのが中島らしい。
頭角を現したといえるのが、4年目の2012年。目標を「初スタメンと初安打」として、尊敬する同郷の先輩・田中賢介と自主トレをこなして臨んだシーズンは、一軍に定着して105試合に出場。優勝にも貢献した。ただ、守備では高い評価を受けたものの、打率.114、盗塁2。「パワー不足」「三振が多い」という打撃が課題とされた。
名手・金子誠の後継者として期待された2013年。西川遥輝が負傷して離脱したこともあり、ショートではなくセカンドのレギュラーに定着。7月以降の78試合でスタメンを張り、打率.238と健闘した。なお、この年、ショートのレギュラーとなったのは、オリックスから移籍した大引啓次(現・ヤクルト)だった。
背番号が56から9になった昨季。目標の開幕スタメンはかなわなかったが、シーズン中盤から2番・セカンドに定着。課題の打撃はファウルで粘る技術を会得したことも大きく、打率.259(規定打席到達)と向上した。盗塁王・西川との1、2番コンビで相手をかく乱し、記録に残らないプレーでもチームに貢献。契約更改では1800万円増の年俸4000万円(推定)という評価を受けた。
7年目の今季は、9番・ショートで初の開幕スタメン出場。現在は1番を打つことが多いが、ここまで全試合出場と、すっかりチームの顔である。7月15日のソフトバンク戦では勝ち越しのスクイズを決め、7月29日のオリックス戦では、一塁ランナーとして、ファーストの頭上を越える打球がライトを転々とする間に生還。栗山監督も絶賛の好走塁を披露した。盗塁数も2年連続盗塁王を狙う西川と争う勢いだ。
まだまだ可能性が残されている限り、日本ハムとしてもソフトバンクの背中を追い続けていることには間違いないが、若干、優勝争いへの興味が薄まった感のあるパ・リーグ。ただ、CSという制度がある以上、日本ハムが日本シリーズに出場するチャンスはもちろん残されている。その突破口を開いていく中島の「走攻守」を、これからも楽しみに追いかけていきたい。
文=平田美穂(ひらた・みほ)