メジャーリーグはレギュラーシーズン残り1カ月を切り、プレーオフ争いとともに個人タイトル争いにも注目が集まっている。特にナ・リーグ(NL)のサイヤング賞争いは例年以上にハイレベルなものになっている。
ドジャースのザック・グリンキーは開幕から防御率1点台を維持し、現在は1.68。勝利数(16勝)はNL3位タイだが、防御率のほか、被打率、勝率などでNLトップの数字を誇る。ALサイヤング賞はロイヤルズ時代の2009年に受賞しており、両リーグでの受賞を目指す。
チームメートの左腕クレイトン・カーショーは3年連続4度目の受賞を狙う。今季は春先に不調に陥り、5月21日の時点で2勝3敗、防御率4.32という成績だった。しかしその後は19試合中18試合でクオリティースタート(QS、6回を自責点3以下)をマーク。その間、11勝3敗、防御率は1.26と巻き返しに成功。勝ち星こそ6位タイの13勝だが、残り試合の活躍次第では4度目の快挙も不可能ではないだろう。
ちなみにチームメートがサイヤング賞の1位と2位を独占することになれば、これはメジャー史上5度目(4組)。直近ではダイヤモンドバックスのランディ・ジョンソンとカート・シリングが2001年と02年に達成している。さらにチームメート2人が防御率2点未満を達成すれば史上2度目となる(1920年以降)。ただし現在、防御率2.15のカーショーが1点台に持ち込むには、残り4試合に先発、それぞれ7イニングを投げると仮定して、28イニングを投げ自責点を2以下に抑える必要がある。しかし今のカーショーなら達成可能とさえ思えてしまう。
ドジャースの左右エースに次ぐ存在といわれているのが今年大ブレークを果たしたカブスのジェイク・アリエッタだ。ここまで両リーグ単独トップの18勝を挙げ、防御率は2.03。特に7月以降は13試合、11勝1敗、防御率1.06と驚異的な活躍を見せている。先月30日のドジャース戦ではノーヒッターを達成するなど、現在最も勢いがある投手だ。
以上3人の名前を挙げたが、本命は開幕から最も安定した投球を続けるグリンキーであることに間違いはない。しかし残り1カ月弱の成績次第で他の2人にも十分逆転するチャンスはある。もしアリエッタが20勝、防御率1点台をマークするもサイヤング賞を逃せば、1990年のロジャー・クレメンス以来の珍事となる。その年、クレメンスは21勝6敗、防御率1.93をマークしながら、27勝6敗、防御率2.95のボブ・ウェルチの次点に終わった。プレーオフ争いが収束しそうなNLにおいて、注目はサイヤング賞争いに移行しそうだ。