球史に残る大混戦!阪神と巨人の弱みは…
混戦と言われてきた今季のセ・リーグ。各球団の残り試合が15前後になっても、どこが優勝するのかまったくわからない状況となっている。
15日現在、ヤクルトが65勝60敗2分で首位。阪神と巨人が0.5ゲーム差の2位につけ、4位の広島もヤクルトとは3ゲーム差だ。残り20試合を切ったセ・リーグで、上位3球団が1ゲーム差以内となるのは2010年の終了時以来のこと。しかし、この時は中日の優勝決定後に接近したもので、優勝決定前では2007年以来で8年ぶりとなる。
また、12日の段階ではヤクルト、阪神、巨人の勝利数が65で並んでいた。残り20試合を切って、上位3チームが同じ勝利数で1ゲーム差以内になるのはセ・リーグ史上初めてのことである。
過去のペナントレースで混戦を苦手にしてきたのが阪神だ。阪神は1970年に残り13試合で巨人、1992年には残り4試合でヤクルト、2008年には残り4試合で巨人と、残り20試合を切ってからの同率首位を3度も経験しながら、いずれも優勝を逃している。
それならば、リーグ3連覇中で優勝争いの経験が豊富な選手が多い巨人の優勝と言いたいところだが、それも数字から見ると厳しい。チーム打率は.243でリーグワーストで、リーグ最低打率で優勝したチームというのは、過去にセ・パ合わせて4チームしかない。
また、規定打席に達している選手が坂本勇人と長野久義の2人だけで、昨年に続いてチーム内に3割打者がゼロ。2年連続で3割打者がいないとなれば、2リーグ制後では球団史上初のことになる。加えて、シーズン20本塁打にも到達しなければ、1960年以来で55年ぶりという記録もちらついている。
巨人に関しては、「昨季もチーム打率がリーグ5位の.257だったが、それでも優勝した」という声があるかもしれない。しかし、昨季はチームの得点圏打率がリーグトップの.291だった。それが今季は.250に低迷。“チャンスでも打てない打線”となってしまっているのだ。
“あのシーズン”と驚くほど似ている今季のペナントレース
阪神も巨人も厳しい…そうなると、この混戦を勝ち抜くはヤクルトととなる。
トリプルスリー達成が確実な山田哲人を中心とした打線は強力で、チーム打率はリーグトップ。さらに、昨季までは打線ばかりに目がいっていたが、今季は投手陣も踏ん張っている。
ロマン、オンドルセク、バーネットによる勝ちパターンのリリーフは、阪神や巨人よりも安定しており、ゲームプランが立てやすい。懸案事項だったショートに大引啓次が加わったことで守備も安定。チームの失策数はリーグ最少だ。ワンプレーの重みが増す終盤戦では、守備が重要となるケースも多いから、その点も有利に働くだろう。
そして何より、今季の流れがあのシーズンに似ている気がして仕方がないのだ。
1992年、野村克也監督に率いられたヤクルトは14年ぶりにリーグ優勝を果たした。そのシーズンも終盤まで巨人、阪神と熾烈な優勝争いを繰り広げていた。
このシーズン、ヤクルトの最終成績は69勝61敗1分。同率2位の巨人、阪神とは2ゲーム差しかなかった。4位の広島は首位と3ゲーム差、5位の横浜(現DeNA)は8ゲーム差、最下位の中日でも首位とは9ゲーム差と全体の差が詰まったシーズンでもあった。
こう見ると、勝敗数や順位まで今季と驚くほど似ている。今年ヤクルトが優勝すれば、2001年以来で14年ぶり。1992年のときと優勝の間隔まで同じなのである。
また、1992年は終盤戦に荒木大輔がケガから復帰し、チームに勢いをつけた。今季は館山昌平がケガから復帰し、チームに勇気を与えている。
“あのシーズン”と大きく似ている2015年、プロ野球史上に残る大混戦を制するのはヤクルトと予想する。
文=京都純典(みやこ・すみのり)