75勝67敗1分、勝率.528。
リーグ4連覇を目指した原巨人は、首位ヤクルトにわずかに及ばず2位でペナントレースを終えた。
V3を支えてきた枢軸と呼ばれるベテラン選手の衰えが顕著で、阿部慎之助はレギュラー定着以来最低の打率.242・15本塁打・47打点、村田修一は打率.236・12本塁打・39打点という極度の打撃不振でともに規定打席には届かなかった。投手陣では三連覇中に3年連続二桁勝利を挙げていた杉内俊哉が故障に苦しみ6勝6敗、過去3年間に計35勝を記録していた内海哲也にいたってはたったの2勝でシーズンを終えた。
・・・という感じで、記録的な貧打も含めて何かとマイナス要素ばかりが取り上げられることの多い今年の巨人だが、なにも悪い事ばかりじゃない。例えば、投手陣では守護神として完全定着した澤村拓一。昨年はキャンプ中に右肩を痛めわずか5勝。先発投手としては立ち上がりに課題があり(13年は先発22試合中9試合で初回失点)、なかなか貯金の出来ない投手だったが、抑え転向元年の今シーズンは60試合に投げ、7勝3敗36セーブ 防御率1.32と大活躍。東京ドームには「筋肉コール」が鳴り響いた。13年終盤には中継ぎとして14.1イニングを1失点という実績はあったものの、「クローザー澤村」は原監督の今季最大のヒット作とも言っても過言ではないだろう。
野手のプラス要素はもちろん立岡宗一郎。ソフトバンクから移籍して4年目の今季、6月の交流戦中に1番打者として定着すると、規定打席にはわずかに届かなかったものの91試合367打席で打率.304、16盗塁。8月には月間40安打に打率4割を記録。今季本塁打なしの非力さや不安定な外野守備とまだ課題も多いが、数億円の給料をもらう選手たちが不振に喘ぐ中、推定年俸900万円の男がチームを救ってみせた。チームでは藤村・中井・大田・橋本と活躍した翌年から失速する若手野手が多いだけに、立岡も来季が本当の勝負の1年になるはずだ。
ひとつの時代の終焉。だが、何かが終われば、同時に何かが始まる。27歳の新クローザー澤村、25歳のトップバッター立岡、そして新主将としてショートを守り続けた坂本勇人は26歳、打線の援護に恵まれない中で防御率1点台と奮闘した新エース菅野智之も25歳。
V4を逃した原巨人。
確かに失ったものは大きかった。
だが、激闘の中で手にしたものも決して小さくはない。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)