チーム最多の109試合でスタメンマスク
「優勝するチームに名捕手あり」とよく言われるが、今季のプロ野球も多くのチームがレギュラー捕手を固定できなかった。
規定打席に達した捕手は、セ・リーグが中村悠平(ヤクルト)、パ・リーグが炭谷銀仁朗(西武)と両リーグ合わせてもたったのふたりだけ。チームの顔として名前があがる捕手も一時期に比べれば少なくなった。
今季、西武との争いを制しクライマックスシリーズに進出したロッテだが、開幕前は昨季限りで引退した里崎智也の次を担う捕手を誰にするかで注目されていた。
開幕からしばらくは吉田裕太と田村龍弘の併用が続いたが、5月以降はほとんどの試合で田村がスタメンマスクをかぶった。最終的には田村が109試合でスタメン出場し、「ポスト・里崎」の座をつかんだといえる。
昨季、田村のスタメンは47試合だったが、今季は倍以上に増えた。打率.170と打撃面では物足りない数字だが、かつての名捕手伊東勤監督が田村にスタメンマスクを多くかぶらせたのは、“強肩”が魅力だったからだろう。
昨季も田村は盗塁阻止率.412と高い数字を残したが、今季はさらによくなり.429。これは、12球団の捕手でトップの数字であった。
パ・リーグ盗塁王の中島卓也に対しても強肩を発揮
田村の対戦球団別の盗塁阻止率は以下の通りである。
ソフトバンク 22盗塁企図 盗塁刺12 阻止率.545
日本ハム 20盗塁企図 盗塁刺7 阻止率.350
西武 10盗塁企図 盗塁刺7 阻止率.700
オリックス 12盗塁企図 盗塁刺4 阻止率.333
楽天 19盗塁企図 盗塁刺7 阻止率.368
セ・リーグとの交流戦では、8盗塁企図で盗塁刺2、阻止率.250。セ・リーグに対してはあまり刺せなかったが、パ・リーグの球団ではオリックスを苦手にして刺せなかったことが目立つぐらいだ。
また、今季のパ・リーグ盗塁王である中島卓也(日本ハム)は41盗塁企図で34盗塁と成功率.829を誇ったが、田村に対しては7盗塁企図で4盗塁、成功率.571しか決められなかった。12球団でも屈指のスピードを誇る中島に対しても、田村はその強肩を十二分に発揮したといえる。
ただ一方で、対戦球団によって阻止率がばらついているように、盗塁をあまり警戒していないときは阻止率が下がっていると見ることもできる。高卒3年目と考えれば、走者を見る余裕がまだないのかもしれないが、正捕手の座をがっちりとつかむためにはそういった洞察力も今後は必要となってくる。
まだまだ肩の衰えを気にする年齢には程遠いが、今のうちから洞察力・観察力を磨いておいて損はない。課題と言われる打撃はもちろんのこと、強肩をさらに生かすために田村がこのオフを経てどういった変化を見せるか注目したい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)