コラム 2015.12.07. 11:30

前田健太、ポスティング容認 変わりゆく日本球界のエース像

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前田健太がポスティングでメジャー挑戦へ[Getty Images]
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マエケンがメジャー挑戦


 マエケン、ついにポスティングへ。

 今季リーグ最多勝と沢村賞を獲得した広島のエース前田健太がポスティング制度を利用してのMLB移籍を球団から容認された。同級生でもある88年生まれの田中将大(現ヤンキース)は14年1月に同制度を利用。譲渡金を上限2000万ドル(24億円)に設定し、7年1億5,500万ドルという大型契約を勝ち取り海を渡った。まだ27歳と若いマエケンも今から複数球団による争奪戦が噂されている。

 06年高校生ドラフト1位で広島に入団した前田は9年間のプロ生活で通算97勝。6年連続二桁勝利、2度の最多勝、3度の最優秀防御率、2度の最多奪三振、そして沢村賞も2度受賞している。名実ともに現在のNPBを代表する投手だ。これで松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大と「日本のエース」と称された投手たちが立て続けにポスティング制度を利用してメジャー移籍をすることになる。

 彼らはそれぞれ高卒ドラ1投手としてプロ入り。そしてNPB在籍年数は松坂8年、ダルビッシュ7年、田中7年、前田9年。皆20代中盤の内に、もうやり残したことはないという感じで日本球界から旅立った。一昔前はドラフト1位で入団した高卒投手は「15年間はエースを張れる」と期待されたものだ。しかし、今は皮肉なことにスーパーエースとして定着したら思ったら、わずか数年で日本球界からいなくなってしまう。もう80年〜90年代の巨人のように斎藤・槙原・桑田と全員高卒ドラ1投手で形成した先発三本柱が、10年以上に渡りチームに君臨するなんてケースは今後ほとんどなくなるだろう。

 現行のポスティングシステムが来季以降どうなるかは分からない。だが、物心がついた時には大リーグ中継がテレビで毎日のように放送されていた今の若い選手たちにとって、MLBは夢や憧れではなくリアルな目標である。大谷翔平(日ハム)や藤浪晋太郎(阪神)は94年生まれ、松井裕樹(楽天)は95年生まれ。そして野茂英雄がドジャースに移籍したのも1995年の出来事だった。

 あれから20年。

 先人達の功績により日本のエースが海を渡ることに何の違和感もない。いつものオフの日常の風景。もはや「メジャー挑戦」というより「メジャー移籍」と言ったほうがしっくりくる。プロ野球ファンにとってもメジャーリーグとの距離は近付いたが、同時にスーパーエースの存在は遠くなった。それが2015年の日本球界のリアルである。

 我々は大谷翔平をいつまで球場で見ることができるろうか?

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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