メジャーの先輩・ダルビッシュ有、田中将大と比較してみると
いよいよと言うか、ついにと言うべきか……。広島のエース・前田健太がポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を球団に直訴。一部報道では、球団も移籍を認める方向で調整しているという。
球団のみならず日本を代表するエースとなり、海を渡った投手といえば、近年ではダルビッシュ有(レンジャーズ)や田中将大(ヤンキース)の名前が挙がる。両投手の渡米前は、どういった成績を残していただろうか。
ダルビッシュは、日本で7年プレーした。通算167試合の登板で、93勝38敗。防御率は1.99で、1イニングあたりに許した安打と与四球の数を示すWHIPは0.98と圧巻の成績を残した。
田中も7年間で175試合に登板。99勝35敗、防御率2.30、WHIPは1.11。エースの名に恥じぬ成績を収めている。
前田はプロ入り1年目こそ一軍での登板がなかったが、それを含めて9年間で218試合に登板し、97勝67敗。防御率2.39、WHIPは1.05となっている。
防御率とWHIPはダルビッシュが頭ひとつ抜けているが、勝利数は3選手とも大きな差はない。「さすが」とうなってしまうような数字が並んでいる。
では、渡米直前の3年ではどうだろうか。ダルビッシュは2009年から2011年の3年で45勝19敗、防御率1.64、WHIP0.91。田中は2011年から2013年の3年で53勝9敗、防御率1.44、WHIP0.94。前田は2013年から今季までの3年で41勝24敗、防御率2.26、WHIP1.02。
ダルビッシュと田中のときは、飛ばないと言われた統一球を使用していたシーズンもあったため、一概には比べられないが、前田より優れた数字が残っている。
一気に減った被本塁打、ゴロ率の増加も明るい材料
これまでの数字を見ていくと、メジャー移籍後の前田には一抹の不安も感じるが、今季急激によくなったという部分もある。
今季の前田は大野雄大(中日)に次いで多い206回1/3を投げたが、被本塁打はわずかに5本。規定投球回に達した投手のなかでは、チームメートのクリス・ジョンソンに並んでリーグ最少の数字となっており、昨季の12被本塁打から大きく減らすことに成功している。
被本塁打が減った要因のひとつは、ゴロアウトの増加が挙げられる。
ゴロアウトとフライアウトの比率を見るGO/AO(※)を見ると、昨季の1.22から1.44とゴロアウトの確率が増えた。
長打になりやすいフライよりもゴロを打たせたほうが良いとよく言われるが、パワーヒッターがずらりと並ぶメジャーでは、日本のとき以上にゴロを打たせたほうがいいことは明確だ。
ダルビッシュは渡米前に1.35から1.50、田中も1.52から1.62とGO/AOが上がっている。その点で、前田はメジャー仕様のピッチングになりつつあるとデータ上では判断できる。
前田のメジャー移籍が実現となれば、広島にとっては大きな戦力ダウンであることは間違いない。日本のプロ野球で投げる前田の姿を見ることができなくなるのも寂しいが、ダルビッシュや田中とまたちがった投球術を駆使する前田がメジャーでどんなピッチングを見せるか、楽しみに待ちたい。
(※)GO/AO
ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロとフライの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライの割合が高い投手となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)