復帰までは平均15~16カ月を要する
来る2016年シーズン、MLBの日本人選手でもっとも注目を集めるのはロサンゼルス・ドジャースと合意したとも伝えられている前田健太だろう。だが、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有がいつ復帰するのかということも気になる点だ。
昨年のオープン戦で右上腕の三頭筋に張りを感じたダルビッシュは、その後のMRI検査で、右肘内側の側副靱帯を部分断裂していることが判明した。部分断裂ということもあり、「そのまま投げ続けるか」「リハビリに入るか」「トミー・ジョン手術をするか」という3つのオプションが示されたが、ダルビッシュは手術を選択。3月17日に手術を受け、2016年シーズンでの復帰を目指すこととなった。
アメリカの野球専門情報サイトによれば、トミー・ジョン手術からの復帰率は90%前後と高い。復帰するまでの期間は、初めてトミー・ジョン手術が行われた1974年から2005年までは平均で16~18カ月だったが、徐々に短縮されていて現在は15~16カ月になっている。ダルビッシュが手術を受けたとき、レンジャーズのダニエルズGMは、2016年5月の復帰を望むと発言したが、14カ月での復帰はかなり楽観的な見方とも言える。
トミー・ジョン手術を受けたら球速がアップする?
2016年シーズンは、ダルビッシュ以外にも多くのエース級投手が手術から復帰する見込みだ。アメリカの成績予測システム、『Zips』によれば、復帰が見込まれている投手のなかでダルビッシュは、トップとなる成績を残すと予測している。
予測の成績は132イニング、防御率3.41。代替レベルの選手と比べ何勝分チームに貢献したかを表す指標WARは2.9。開幕から約2カ月の欠場が予想されることを考えれば、規定投球回に達しないのは仕方ないだろう。トミー・ジョン手術を受けた選手は、復帰から2シーズン目から力をより発揮できるようになるとも言われるが、復帰1年目に予測システム通り防御率3点台前半が残せれば十分である。
ところで、トミー・ジョン手術に関してこんな噂がある。
「手術を受けたら肘が強くなる」「手術を受けるだけで球速がアップする」
噂は徐々に広まり、アメリカのアマチュア選手のなかには肘がまったく問題ないにも関わらずトミー・ジョン手術を受ける者もいたという。しかし、この噂はもちろん噂である。靱帯を移植することで傷ついていた肘がよくなることは確かだが、それは傷つく前に戻っただけであり、手術で以前より強くなることはないという見方が強い。
実際、球速が上がる選手もいるが、それは手術の影響ではなく手術から復帰までのリハビリによってもたらされたものだろう。近年、スポーツ科学やリハビリテーションの技術が進化し、強い体を作れるようになった。リハビリでじっくりと体を鍛え治すことができ、結果的に球速アップにつながっていると見るべきだ。
ダルビッシュがSNSなどに載せる画像を見ると、体がまた一段と大きくなっているように見える。リハビリも順調に進んでいるようで、復帰後にどのようなピッチングを見せてくれるか今から楽しみだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)