ドジャースと入団合意報道も、契約内容は超異例!
ポスティングシステムを利用してメジャー挑戦を目指していた広島・前田健太が、ロサンゼルス・ドジャースと入団合意に至ったことが報じられている。
中でも気になるのが、契約の内容だ。現地記者のTwitterなどで伝えられているところによれば、基本は8年総額2500万ドル(約30億円)とのこと。これが事実だとすると、年俸に換算しても4億円足らず。日本での実績を考えれば格安とも言えるが、もちろんそれだけではない。
前田にはある条件をクリアすると年俸も上がるという「出来高」が設けられており、なんとそれが1年あたり1000万~1200万ドル(約12億~14億4000万円)とも言われているのだ。
出来高の金額や条件など、詳細に関しては現時点では不明だが、先発登板数や投球イニング数などを中心に、条件を満たすごとにその額が増えていくものとみていいだろう。
一部報道では出来高の達成条件はさほど難しいものではないという報道もあり、ケガなくローテーションを守って毎年2ケタ以上の勝ち星を挙げれば、8年間で100億円前後の大金を手にすることも可能になる。
過去の日本人の「出来高」ってどんなもの?
メジャーでは多くの選手がこういった「出来高」の契約を結んでいるが、ここまで偏った契約は前代未聞だ。
過去の日本人選手を振り返ってみると、2015年にイチローが単年200万ドル(約2億4000万円)でマーリンズと契約。ベースは抑えめとなったが、「300打席到達」で40万ドル、さらにその後は「50打席ごと」に40万ドルずつ追加されるというものだった。設定は「600打席」までで、最大280万ドルという基本年俸を上回る額が設定されていた。
その他では、2011年オフに楽天からマリナーズに移籍した岩隈久志も単年150万ドル(約1億8000万円)の基本年俸に対し、出来高は最高で340万ドル(約4億円)という契約を交わしている。
この裏には岩隈が11年に右肩を故障していたということがあり、リスクを最小限に抑えたいチーム側に有利な内容となっていたが、結果的には1年目から活躍を見せた岩隈が2013年と14年にそれぞれ650万ドル(約7億7000万円)を勝ち取った。
まさに“ニンジン作戦”!? めずらしい「出来高」
また、出来高の多くは打者なら「打席数」、投手なら「登板数」などを条件にすることが多いが、2011年にブルワーズと1年契約を結んだ斎藤隆は、珍しい出来高を設定している。
それが、「オールスターに“先発”すれば条件クリア」というもの。斎藤はメジャーで一度も先発登板をしたことがなく、もちろんその年のオールスターでの先発もなし。摩訶不思議な条件であった。
その他、日本人以外の珍しい出来高契約も幾つか紹介したい。
当時ほぼ指名打者での起用が見込まれていた長距離砲アダム・ダンは、「ゴールドグラブ賞を受賞」という条項の出来高をホワイトソックスと、カルロス・リーは、「シーズン中の“体重”」に対してアストロズと出来高契約を結んだ。
2005年のナ・リーグ優勝決定シリーズ第6戦に先発したアストロズのロイ・オズワルトは、試合前にオーナーから「試合の勝ち投手になれば、ブルドーザーをプレゼントする」という約束を引き出し、見事2000万円以上の“ご褒美”を手にしたというエピソードもある。
前田の話に戻るが、メジャーでは実力未知数の日本人選手へのリスクを最小限に抑えたいチームと、保証額は少ないが条件をクリアすれば大金を手にすることができる選手にとって、出来高制はある意味理にかなっているともいえる。万が一のケガの際には選手側も不要なバッシングにさらされることもなく、チームも出来高分の額を他の補強に充てることができるというメリットもあるためだ。
今後、日本人選手の契約は出来高に比重がかかった内容が増えていくのかもしれない。