黒田博樹(広島)は6億円+出来高、トリプルスリーを達成した柳田悠岐(ソフトバンク)は3倍増の2億7000万円
オフの風物詩、プロ野球契約更改。やはりスポーツ選手は特殊な職業だ。
なぜなら、選手名鑑を開けば仕事の業績が世界中に公開され、同僚選手の年俸の金額まですべて記載されている。例えば、一般企業で商談相手の営業成績や隣の席に座る先輩の給料額がハッキリ分かるなんてことはあり得ないだろう。
ついでに言えば、1年間で給料が億単位で変動する会社員もほとんどいない。まさに天国と地獄のストーブリーグ。五十嵐亮太(ソフトバンク)のように2億円の大幅アップを勝ち取る選手もいれば、杉内俊哉(巨人)のように4億5000万円減の球界史上最高額ダウンから再出発を期すベテランもいる。
13年から3年連続で球界最高年俸選手として君臨していた阿部慎之助(巨人)は、1億8400万円ダウンの3億2600万円でサイン。その座を広島の黒田に明け渡した。
阿部の自身最高年俸は黒田と同じく6億円。04〜05年の佐々木主浩(横浜)は6億5000万円。松井秀喜も日本時代の最高年俸は6億1000万円(02年)である。イチローやダルビッシュも年俸5億円を超えると、その存在が名実ともに所属球団の枠に収まりきれなくなりMLBへと渡って行った。
過去に日本人選手で初めて1億円に到達したのは、1987年の落合博満(当時・中日)で1億3000万円だ。同年、ヤクルトが獲得したのが、メジャー9年間で通算215本塁打のエリートスラッガーで、来日前年もアトランタ・ブレーブスで27本のホームランを放った赤鬼ボブ・ホーナー。29歳の助っ人は期待通り本塁打を連発し、地上波テレビでヤクルト戦が緊急中継。ビールのCMにも出演し、まさに社会現象を巻き起こした。
規定打席不足ながらも31本塁打を記録したホーナーの年俸は推定3億円。当時の日本人最高額プレーヤー・落合の約2.3倍。今の球界で言えば、黒田の2.3倍にあたる年俸14億円クラスのメジャーリーガーが日本球界に来るようなものだ。
そして、その黒田もヤンキース在籍時は年俸1600万ドル(約19億2000万円)。年俸という観点から見ても、2015年シーズンの黒田の広島復帰はホーナー来日以来の衝撃と言っても過言ではないだろう。
90年代後半からもう15年以上、日本人最高年俸は5億〜6億円前後のラインで横ばいだ。外国人選手でもペタジーニの巨人時代の7億2000万円(03〜04年)が最高。果たして、その先に球界を連れて行くのは大谷翔平か?それともトリプルスリーコンビの柳田悠岐と山田哲人か?
新時代の扉を開くのは誰か…。NPBの年俸8億円時代の到来を楽しみに待ちたい。
(※金額はすべて推定)
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)