スター・ウォーズとプロ野球
2015年12月18日午後6時30分。日本全国370館で『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開された。全世界が待ちに待ったシリーズ最新作だ。
思い返せば、記念すべきスター・ウォーズ第1作が全米公開されたのは今から38年前の1977年。この年ニッポン列島では王貞治が世界新記録となる756号本塁打を放ち大フィーバーに沸いていた。スター・ウォーズとサダハル・オー、まさに20世紀の歴史そのものである。
翌78年、アメリカに遅れること約1年『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』が日本公開されると、ヤクルトスワローズが球団創立29年目の初優勝。そして、久々に新作が公開された今季もヤクルトが14年ぶりのリーグ優勝。世紀を跨いでスター・ウォーズとの相性の良さを証明してみせた。
かつて昭和の時代の子どもたちはブラウン管の中に映るナイター中継とゴールデン洋画劇場に大人の世界を垣間みたものだ。
スマホもネットもなかったあの頃…人生に必要なことはテレビとファミコンと少年ジャンプから学んだ彼らが夢中になったシリーズ2作目の『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』は80年の公開。
前作公開時にホームラン世界記録を樹立した王貞治は30本塁打を放ちながらもついに現役引退。長嶋茂雄も「男のケジメ」と監督の座を退き、巨人軍のひとつの時代が終わりを告げたのもこの年のことだった。
遠い昔、はるか彼方の“ONの代役”という重責を背負ったのが原辰徳だ。
原がキャリア唯一の打撃タイトルとなる打点王と自身初のMVPを獲得したのが83年、この年に公開されたのがシリーズ3作目の『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』である。
83年と言えば巨人戦中継の年間平均視聴率はなんと27.1%を記録。しかし、日本シリーズでは新興球団・西武ライオンズが4勝3敗で盟主巨人に競り勝ち、新時代の到来を印象づけた。ちなみに、時を同じくしてスター・ウォーズも本作で旧三部作が完結している。
だが、物語は過去と未来を繋げ続いていく。シリーズ4作目『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』は、前作から16年後の99年公開。この年、初の日本一に輝いたダイエーホークスの中心は、80年代を席巻した西武出身の工藤公康と秋山幸二だった。
シリーズ5作目『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』が公開された2002年、自身監督初年度に日本一を勝ち取ったのは巨人の原監督だ。
キャリアの節目にスター・ウォーズとの因縁が生まれる若大将。05年の6作目『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』から10年後の2015年、新作『フォースの覚醒』が公開され原辰徳も12年間の監督生活に別れを告げた。
映画史を代表する名作シリーズ。それでも過去の栄光に頼るのではなく、新シリーズが公開される度に新しい客層を劇場へ連れていこうとする貪欲な姿勢はすべてのエンターテインメントの見本である。
既存のファンを満足させると同時にいかに新しいファンも開拓していくのか?
球場は劇場だ。今こそプロ野球もスター・ウォーズから学べることがあるのではないだろうか?
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)