投高打低が進んでいる近年のMLB
先日、MLB機構のロブ・マンフレッドコミッショナーが現行のストライクゾーンを変更する可能性があるとメディアに明かした。変更には選手会の同意が必要となるが、ストライクゾーンの低めを、ひざ頭の下部から上部に動かし、現行のゾーンから少し引き上げることを検討しているようだ。現行のゾーンから引き上げるとは、つまり現行のストライクゾーンが狭くなるというわけだ。
投手にとっては頭が痛くなりそうな話だが、背景にはMLBの投高打低という現状がある。昨季、MLBでチーム打率が最も高かったのはデトロイト・タイガースで.270。チーム打率が.250以下が12チームもあり、チーム打率.260以上は9チームしかなかった。規定打席に達した選手はMLB全体で142人いたが、打率3割以上は20人。一方、打率.250以下の選手は30人いる。
1試合の平均得点は、2014年の4.07点より多い4.25点だったが、2000年の5.14点から見れば1点以上も少なくなっている。昨季、MLBではシアトル・マリナーズの岩隈久志をはじめ、7度のノーヒッター試合があった。ワシントン・ナショナルズのマックス・シャーザーは、42年ぶりとなる同一レギュラーシーズンで2度のノーヒッターを達成となった。
計7度のノーヒッターは、1990年、1991年、2012年と並び20世紀以降では最多で、過去の3年はいずれも継投でのノーヒッターを含んでいたが、昨季は7度ともひとりの投手が投げきったものだった。
試合時間の短縮とストライクゾーンの変更を両立できるか?
では、ストライクゾーンがすぐにでも変更されるかと言えば、それはそれで簡単な話ではない。ストライクゾーンが狭くなれば、攻撃力が高まり打撃戦が増えるだろう。しかし、打撃戦になれば試合時間も長くなる。マンフレッドコミッショナーは、就任時に最優先事項として試合時間の短縮を掲げている。このあたりのバランスが非常に難しいのである。
本当にストライクゾーンが変更されるのか、されるとすればいつからになるのか気になるところだが、低めへの制球力に定評がある日本人投手にとっては気になる問題に違いない。
特に、岩隈久志や、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大のように、スプリットを主な決め球にしている投手にとっては、左右ではなく高低のゾーンが変わることはピッチングの組み立てにも関わってくるかもしれない。
MLB機構がどういった決断を下すのか。また、変更されたときに日本人投手のピッチングに変化は表れるのか。非常に気になるテーマである。
文=京都純典(みやこ・すみのり)