K/BBは12球団トップを記録した大谷智久
大谷と聞けば、ほとんどの人が日本ハムの大谷翔平を思い浮かべるだろう。昨季、最多勝、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠を獲得した大谷の凄さは改めて説明するまでもないが、もうひとりの大谷であるロッテの大谷智久も忘れてはならない。
プロ6年目の昨季、大谷は8月末に右内転筋の肉離れで3週間ほど戦列を離れることもあったが、チーム最多の56試合に登板し3勝1敗、防御率2.39。パ・リーグ2位の32ホールドを記録した。この数字だけを見ると飛びぬけたものはないが、大谷はある数字で12球団トップを残していたのである。
昨季、大谷は64回を投げ53個の三振を奪った。与えた四球はたったの5個。与四球率は0.70で、三振を四球の数で割ったK/BB(※)という指標は10.60だ。リリーフ投手のなかで大谷に次ぐ数字は、サファテ(ソフトバンク)の7.29だが、大谷のほうが3.00以上も高い。
三振を多く奪うことができる上に、四球で余計な走者を許すことも少ない。投手として大切な要素を大谷智久は持っているといっていい。緊迫する場面で登板することが多いリリーフ投手にとって、三振を奪うことができ、四球で崩れないことは重要だ。
得意不得意がハッキリしている点が課題
K/BBで高い数値を残した大谷だが、もともと与四球の少なさには定評があった。プロ6年のなかで、シーズンの与四球率が最も悪かったのは13年の3.02。11年は1.73、14年も1.49と少なく、プロ通算でも1.78である。
クローザー・西野勇士につなぐセットアッパーとして今季も期待がかかる大谷だが、課題もある。昨季、大谷の被打率は.238と比較的優秀だったが、打たれた57安打のうち、二塁打が10本、三塁打が2本、本塁打が4本。被打率に対し被長打率は.346と高かった。
また、ナイターでは防御率1.86、被打率.207とよく抑えたが、デーゲームでは防御率3.20、被打率.280とよく打たれたことも課題のひとつ。もうひとつ課題をあげるなら、右打者を被打率.203と抑えたが、左打者には.277と打たれていることも改善したい。
あらゆる場面で登板する可能性があるリリーフ投手にとって、苦手なシチュエーションは少なくしたい。数字ほど安定感やインパクトがないのは、得意不得意がハッキリしているからではないだろうか。
現状、西野と大谷以外のリリーフは他球団に比べて弱いロッテ。今季もセットアッパーとして期待がかかるが、高いK/BBを維持しつつ苦手を克服し、ブルペンを支えてほしい投手である。
(※)K/BB(Strikeout to walk ratio)
数値が高いほど三振が取れて四球が少ないことを示す指標。コントロールがよくて、バットに当てさせないボールを投げられる、投手としての純粋な能力を表すともいわれている。昨季、セ・リーグの平均は2.34、パ・リーグの平均は2.15。
文=京都純典(みやこ・すみのり)