ドラフト前から大胆発言で注目を浴びる
昨年のドラフト会議で楽天からドラフト1位で指名されたオコエ瑠偉。あの鮮烈なまでの夏の甲子園での活躍もあり、マスコミの注目度も他のドラ1組に比べてかなり高い。
オコエのドラフト前からの目標は、トリプルスリーだ。それこそ、指名されたときには「遅くてもFA取得までにはメジャーに行けるような選手になりたい」とマスコミが大喜びそうな大胆な発言を連発していた。
言葉というのは、自信の裏返しでもある――。果たしてオコエの言葉は、その後どのように変化していったのか。
自らの選手のタイプを改めて理解しつつあるオコエ
入団会見では「気を引き締めていく。まずは体力をつけて、そこに技術を上乗せしたい」と優等生発言に終始。だが、同期の茂木栄五郎に楽天の応援歌を熱唱させられ、お茶目な一面も見せた。
新人合同自主トレ終了の際は、「周りの全員がプロ。どの先輩もいいものを持っていると思うので、自分のものにできるように学んでいきたいと思います」とプロの実力を目の前にしたのか、多少謙虚な発言が目立ってくる。
それでも、オコエは高卒野手ルーキーとして、球団史上初の春季キャンプ一軍スタートを勝ち取った。梨田昌孝監督も「守備、走塁はチームのなかでもトップクラスではないか」と目をかける。
キャンプでは池山隆寛打撃コーチの指導もあり、最初はまったく飛ばなかった打球にも変化が出始めた。フリー打撃では柵超えを23本マークした(2月9日)。1次キャンプ最終日には、「高校野球では自信を持ってプレーできたけど、この11日間では先輩たちとのレベルの差を感じた。ただ、日々成長できている実感はある。レベルアップしたいです。開幕一軍はそんなに甘いものではない」とプロの壁を自覚した様子だ。
そんなオコエは、キャンプの途中で報道陣に注文を出した。
「フリー(バッティング)で何スイングして安打性とか、サク越え何本とか、本気でやめてほしいです……。自分はホームランバッターじゃない」
天性の素質で高校時代は目覚ましい活躍をしてきたオコエが、改めて自分を長距離打者ではなく、足と守備で見せるタイプだと考え始めている。プロの投手のスピードやキレに驚き、手を豆だらけにしながら金属バットから木製バットへの対応を進めている段階なのだ。
ドラフトから4カ月。オコエは信じられないような早さで、野球を吸収するとともに、人としても言葉を選ぶ慎重さを身につけ始めた。
今のオコエは、いってみれば小さな芽が出たばかりである。水をたっぷりと吸い、どんどんと伸びていく。あくまでも、最初は足や守備で見せることが最優先。だがやはり、バッティングで大輪の花を咲かせるオコエ瑠偉を一軍の舞台で早く見たい。
文=松本祐貴(まつもと・ゆうき)