数少ない“左殺し”が移籍
昨季、西武とのし烈な争いを制して2年ぶりのクライマックス・シリーズ進出を果たしたロッテ。伊東勤監督となって4年目の今季はリーグ優勝を狙いたいところだが、チームとして大きな課題がある。
それは投手・野手ともに“左”に弱いことだ。
まずは野手。昨季、相手チームの先発が右投手だったときの勝敗は56勝57敗1分。それに対して左投手だったときは17勝12敗。勝敗だけを見れば相手チームの先発が左投手のほうが高い勝率を残したが、平均得点を見ると右投手が先発のときは4.03点だったのに対し、左投手が先発のときは3.52点と0.5点ほど落ち込んでいる。
チーム打率も、右投手に対しては.262だったが、左投手に対しては2分以上も下がって.239。左投手と30打数以上対戦して打率3割以上を記録したのは、角中勝也ただ一人だった。
主力野手の左右投手別対戦打率を見てみると、以下のようになる(2015年シーズン)。
鈴木大地 右.266 / 左.252
清田育宏 右.324 / 左.289
クルーズ 右.250 / 左.282
角中勝也 右.290 / 左.304
デスパイネ 右.265 / 左.229
今江敏晃 右.305 / 左.200
田村龍弘 右.173 / 左.161
荻野貴司 右.274 / 左.250
中村奨吾 右.239 / 左.208
井口資仁 右.252 / 左.235
こうして見ると、ほとんどの選手が右投手より左投手のほうが打率を下げていることが分かる。さらに、数少ない“左キラー”だったクルーズは、巨人に移籍してしまった。
銃刀法違反により開幕から4週間の出場停止となった新助っ人のナバーロも、アメリカ・マイナー時代の成績を見ると2013年は対右が.281なのに対し、対左は.223。2012年も対右.261に対して、対左.250と、決して左投手を得意にしているとは言えない。
昨季のパ・リーグで規定投球回に達した左投手は日本ハムの吉川光夫だけとはいえ、チーム全体で左投手対策を講じる必要があるだろう。
左打者によく打たれている左腕も多い
投手陣も、右打者に対しての被打率が.257だったのに対し、左打者には.280とよく打たれた。
パ・リーグで規定打席に達した左打者はロッテの選手を除いて12人いたが、そのうち8人はロッテ戦で打率3割以上を記録している。
後藤光尊(楽天)、西川遥輝(日本ハム)、森友哉(西武)といったところはロッテ戦以外では打率2割台も、ロッテ戦では3割以上とよく打った。
主力投手の左右打者別の被打率は以下の通りとなる(2015年シーズン)。
涌井秀章 対右.255 / 対左.253
石川 歩 対右.282 / 対左.268
大嶺祐太 対右.310 / 対左.240
イデウン 対右.267 / 対左.264
大谷智久 対右.203 / 対左.277
唐川侑己 対右.254 / 対左.362
チェン 対右.247 / 対左.308
藤岡貴裕 対右.229 / 対左.276
西野勇士 対右.182 / 対左.250
古谷拓哉 対右.185 / 対左.365
益田直也 対右.202 / 対左.293
松永昂大 対右.220 / 対左.242
涌井、石川、大嶺の三本柱は左打者を比較的抑えているが、セットアッパーの大谷は7分以上も差がある。
また、チェン、藤岡、古谷、松永は左腕でありながら左打者によく打たれており、古谷にいたっては左右の被打率に倍近くも差があることが分かる。
野手か投手のどちらかが左を苦手にするということはよくあるが、そろって左を苦手にしているチームも珍しい。
昨季のパ・リーグは、打撃十傑のうち7人が左打者とリーグ内に左の好打者が多いとはいえ、せめて左腕は左打者をしっかりと抑えたいところだ。
本拠地が川崎から千葉に移り、マリーンズとなって25年目を迎える2016年……。悲願の優勝へ「対左」がキーになりそうだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)