捕手の打撃に注目
大型連休真っ只中、プロ野球は開幕から1カ月以上が経過した。
1位から5位までが3ゲーム差の中にひしめき合うセ・リーグ、ソフトバンクとロッテの2球団が首位争いをするパ・リーグ。各球団レギュラーメンバーも徐々に固まってきたが、正捕手だけは固定できていないチームが多い。5月1日終了時、捕手の規定打席到達者は中村悠平(ヤクルト)、戸柱恭孝(DeNA)、小林誠司(巨人)、嶋基宏(楽天)、田村龍弘(ロッテ)の5名のみ。数年前に元メジャーリーガー城島健司が引退し、侍ジャパンの4番を打った阿部慎之助(巨人)も37歳になり開幕から二軍調整が続いている。
近年の日本球界ではリード面や盗塁阻止率を言及されることは多々あるが、打撃面は二の次といった雰囲気の捕手事情。打てるキャッチャーは死んだのか? 今回はあえて「捕手の打撃面」に注目してみよう。各球団チーム内最多出場の捕手の打撃成績は以下の通りだ。
<セ・リーグ>
杉山翔大(中日)
今季成績:19試合 打率.340 1本塁打 10打点 OPS.935
中村悠平(ヤクルト)
今季成績:30試合 打率.242 2本塁打 16打点 OPS.697
会沢翼(広島)
今季成績:18試合 打率240 2本塁打 9打点 OPS.709
戸柱恭孝(DeNA)
今季成績:27試合 打率.216 1本塁打 3打点 OPS.511
岡﨑太一(阪神)
今季成績:18試合 打率200 0本塁打 4打点 OPS.539
小林誠司(巨人)
今季成績:29試合 打率198 0本塁打 10打点 OPS.520
※阪神は19試合出場の梅野隆太郎が2軍降格のため岡崎の打撃成績
<パ・リーグ>
鶴岡慎也(ソフトバンク)
今季成績:18試合 打率.318 0本塁打 3打点 OPS.784
嶋基宏(楽天)
今季成績:26試合 打率.270 1本塁打 8打点 OPS.791
炭谷銀仁朗(西武)
今季成績:27試合 打率.241 0本塁打 3打点 OPS.525
大野奨太(日本ハム)
今季成績:20試合 打率.217 1本塁打 3打点 OPS.638
田村龍弘(ロッテ)
今季成績:28試合 打率.194 0本塁打 9打点 OPS.562
山崎勝己(オリックス
今季成績:20試合 打率.135 0本塁打 0打点 OPS.320
セでは規定打席未到達ながらも杉山(中日)の攻撃力が頭ひとつ抜けており、パでは嶋(楽天)の安定感が目立つ。開幕から全試合先発マスクを被るのは中村と小林の2名。中村は強力ヤクルト打線の一員として12球団捕手最多の2本塁打、16打点と存在感を発揮。阿部の代わりに巨人の正捕手を任せられた小林は打率1割台ながらも二桁打点、得点圏打率292、6犠打を記録している。盗塁阻止率.417と強肩は健在だが、レギュラー死守のためにはやはりもう少し打撃面での確実性を上げていきたい。
ソフトバンクの鶴岡は日本ハム時代の13年に114試合(244打席)でキャリアハイの打率.295を残しているが、移籍後は14年打率.216、15年打率.195と低迷。高谷裕亮や斐紹(あやつぐ)とのポジション争いの行方とともに今季の打撃好調をどこまで持続できるのか注目したい。
セ・リーグではDH制がない上に、ルナ(広島)、クルーズ(巨人)、高橋周平(中日)、西岡剛(阪神)、畠山和洋(ヤクルト)、筒香嘉智(DeNA)と各球団主力クラスの野手の故障離脱が相次いでおり、8番打者にも攻撃力を求めたいところだ。
もしかしたら、今季の混セを制する決め手は「打てる捕手」の出現かもしれない。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)