話題になった「捕手・今成」
4月17日の中日-阪神戦。大きな話題になったのが、阪神・今成亮太の“捕手復帰”だ。
控え捕手を使いきって捨て身の攻撃に出た金本阪神は、9回二死から追いつき、試合を振り出しに戻す。しかし、追いついたは良いものの、出場可能な捕手はもう残っていない。そこで金本監督が“扇の要”を託したのが今成だった。
元は捕手としてプロ入りした今成だが、、一軍でマスクを被るのは2013年の7月13日・DeNA戦以来で3年ぶりのこと。それでも、代わった高宮を巧みにリードし、9回裏を3人で斬ってみせた。
過去にもあった“緊急捕手”
こういった出来事が起きると、まず思い出すのが木村拓也の名前だろう。
2009年9月4日の巨人-ヤクルト戦。延長11回裏に、巨人の捕手・加藤が頭部死球を受けて負傷交代。加藤はスタメンマスクの鶴岡に代わって出場していた選手であり、正捕手・阿部もこの日は一塁での出場から途中交代。この時点でもうベンチに捕手登録の選手はいなかった。
そこで白羽の矢が立ったのが、木村拓也である。プロ入りは捕手だったとはいえ、10年以上のブランクがあった。それでも豊田に藤田、野間口とめまぐるしく代わった3投手を見事に導き、1回を無失点。指揮官はベンチに戻ってきた男を握手で出迎え、何度も肩を叩いて称えた。
捕手というのは特殊なポジションであり、本職でない選手が代わりに入るということは非常に稀なこと。加えて近年は柱となる捕手が少ないことから、一軍捕手は3人体制が主流となっており、よっぽどの総力戦にならない限り捕手が足りなくなるということはない。
それでも、グラウンドに出ている以上は何が起こるか分からない。“コリジョンルール”の導入で捕手が潰されるシーンはなくなったが、ケガのリスクというのは常につきまとうものだ。
もし不測の事態が起きた時、どんな選択肢を採るのか。また、どんな選択肢を用意しておくのか。こういった“リスクヘッジ”も、指揮官にとって大切な資質のひとつである。
各球団の“緊急捕手”候補は?
では、今回の今成のような“緊急捕手”の候補というと、ほかのどんな選手がいるだろうか。
やはり中心となるのは、捕手を経験している選手だろう。どれだけブランクがあったとしても、まったくの未経験者よりは勝手がわかっているからだ。
さらに、元は捕手ながら生き残っていくためにコンバートしたという選手は球界に意外と多く、いざという時に出て行くことができる選手というのも少なくない。
今成につづく…?各球団の“緊急捕手”候補は以下の通り。
<ソフトバンク>
猪本健太郎(25歳/内野手)
・鎮西高時代は1年生から正捕手。
・プロでも2年間は二軍で捕手を務めた。
<日本ハム>
飯山裕志(36歳/内野手)
・2005年に二軍で捕手を5試合経験。
<ロッテ>
肘井竜蔵(20歳/外野手)
・捕手として入団。今年から外野手登録。
<西武>
熊代聖人(27歳/外野手)
・昨年8月の楽天戦で控え捕手を使いきり、試合後のインタビューで「最悪の場合どうしていたか」を尋ねられた田辺監督が「いないですね…まぁ熊代あたりですか」と発言した。
・捕手経験はなし。
<オリックス>
原拓也(31歳/内野手)
・高校2年までは捕手。
<楽天>
内田靖人(20歳/内野手)
・高校時代は捕手。2年目の昨季から内野手登録に変更。
岡島豪郎(26歳/外野手)
・捕手としてプロ入り。2014年から外野手登録に変更。
・2014年7月1日のオリックス戦では試合途中から急遽捕手を務めた経験も。
☆一軍通算マスク49試合
銀次(28歳/内野手)
・プロ入りまでは捕手。2009年より内野手登録に変更。
・捕手としての一軍出場経験はなし。
<ヤクルト>
三輪正義(32歳/内野手)
・2013年4月、BCリーグ新潟との練習試合で捕手としてスタメン出場した経験あり。
<巨人>
寺内崇幸(32歳/内野手)
・2013年オフ、秋季キャンプで当時の原辰徳監督から指示を受け、捕手としての練習に取り組む。
吉川大幾(23歳/内野手)
・昨年5月23日の中日戦、阿部慎之助が死球を受けた際に原監督からブルペンで捕球練習するよう指示された。(結局、出場はなし)
<阪神>
今成亮太(28歳/内野手)
・元々は捕手として入団。昨秋のキャンプから捕手練習も再開していた。
・4月17日の中日戦で、3年ぶりとなる一軍マスク。
☆一軍通算マスク56試合
狩野恵輔(33歳/外野手)
・元々は捕手として入団。2011年を最後に捕手出場なし。
☆一軍通算マスク164試合
<広島>
中東直己(35歳/外野手)
・社会人のJR西日本時代に捕手を務め、プロ入り後もオープン戦でマスクを被った経験がある。
・直近では2014年に1度マスクを被っている。
☆一軍通算マスク6試合
<中日>
福田永将(27歳/内野手)
・横浜高時代は捕手。プロでは打撃を買われ、2年目から本格的に内野手に転向も、2012年には4年ぶりに捕手再転向した。
・しかし、結局出番は内野が主だったため、2012年のオフにはまた内野手へと転向している。
☆一軍通算マスク8試合
<DeNA>
山崎憲晴(29歳/内野手)
・高校時代に1年間捕手経験あり。
・2013年には緊急時に備えて練習も行い、ファームで1試合マスクも被った。
柳田殖生(34歳/内野手)
・2015年の春季キャンプで捕手練習に参加。「いざというときのために...」。