コラム 2016.05.11. 07:30

巨人V奪回のカギを握る若手左腕ふたりの“長所”と“短所”

左腕でありながら左打者が苦手な今村信貴


 2年ぶりのVを狙う巨人。チーム防御率は3.58でセ・リーグ2位、チーム打率はリーグ5位の.249と昨季に続き、今季も投高打低の戦いが続いている。先発陣の防御率もDeNAに次いでリーグ2位の3.36と好成績だが、信頼を置けるのは4勝0敗、防御率0.79のエース菅野智之だけというのが現状だ。

 マイコラスと杉内俊哉がケガで開幕から戦列を離れ、ベテランの内海哲也と大竹寛は不振で今季はまだ一軍での登板がない。昨年の育成ドラフト8位、全体でも最後に指名された長谷川潤が3月下旬の支配下登録を経て、5月6日の中日戦でプロ初登板初先発を果たした。一気に階段を駆け上がったことで話題を呼んだが、逆に言えば巨人が先発陣の台所事情に悩んでいる証でもある。

 そんななか、開幕から先発ローテーションを守っている若手の左腕がふたりいる。高卒5年目の今村信貴と高卒3年目の田口麗斗だ。

 2013年に1勝、2014年に2勝と徐々に成績を伸ばしていった今村だが、昨季は一軍登板ゼロに終わった。迎えた今季、初登板こそリリーフだったものの、4月3日の広島戦からは中6日のローテーションを守り、1勝1敗、防御率4.36。先発した6試合のうち、6回を投げ切ったのは4月30日のヤクルト戦だけと長いイニングを投げる能力に課題がある。また、右打者の被打率は.209と抑えているが、左打者に被打率.357と打たれている点も不安だ。

 一方で長所もある。三振以外のアウトの内訳を見ると、ゴロアウトが57、フライアウトが15と、ゴロアウトが圧倒的に多いことだ。ゴロよりもフライのほうが長打になりやすいが、今村は長打を打たれる可能性が低いと言える。

 実際、チームメートの高木勇人はゴロアウトが37、フライアウトが41と、フライのほうが多く、被安打47のうち長打が16本(二塁打12、本塁打4)。今村が打たれた長打は二塁打2本、三塁打1本、本塁打4本の計7本。高木が41イニング、今村が33イニングと投球イニング数に違いはあるが、高木より今村のほうがゴロを打たせている分、長打を打たれる可能性も低い。本塁打の出やすい東京ドームを本拠地にしているチームの投手として、今村のゴロを打たせる能力は大きな武器になる。


被本塁打を減らしたい田口麗斗


 昨季3勝を挙げ、防御率も2.71を残すなど今季は開幕から先発ローテーションの一角として期待された田口。5月10日現在、1勝1敗、防御率2.61の数字を残し、4月27日の阪神戦では自身初の完投勝利を記録。6試合に先発し、6イニング未満で降板した試合が4月16日の広島戦だけと十分に先発投手の役割を果たしている。

 右打者に対し被打率.266、左打者に対しては被打率.267と打者の左右で成績に差がなく、また、ゴロアウトが47、フライアウトが30と田口もゴロを打たせるのがうまいタイプの投手だ。しかし、被本塁打は6本。好投していてもエアポケットに入ったかのように、甘い球を投げてしまうことがあるのは改善の必要があるだろう。特に勝負どころのシーズン中盤戦から終盤戦にかけての不用意な一発は、ペナントレースの行方を左右することもあるだけに、より配慮が必要になる。

 今季も昨季同様、混戦が続くことが予想されるセ・リーグ。そのなかで先発ローテーションをシーズン通して守ることができれば、今村と田口にとって大きな経験となるはずだ。ふたりがどれだけの経験を積めるかが、今季に限らず将来の巨人の財産になっていくだろう。

文=京都純典(みやこ・すみのり)

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