若い世代の台頭が目立つ遊撃手
混セとソフトバンク独走。
開幕から1カ月半が経過したプロ野球はほぼ戦前の予想通りの展開になってきている。セ・リーグは首位中日から5位ヤクルトまで2ゲーム差の中にひしめき合う混セ。
対照的にパ・リーグは6連勝中のソフトバンクが貯金12で首位快走中。ただ、ペナントレースは残り100試合以上残っているので、勝負はこれからだろう。
今季のセ・リーグでは各球団「遊撃手」の打撃での活躍が目立っている。週末の東京ドームでは堂上直倫(中日)が自己最多の6打点の活躍。マツダスタジアムでも倉本寿彦(DeNA)が3安打2打点とチームの勝利に貢献した。
内野の要でもあるショートストップ。これまで一塁手や三塁手と比較すると守備力重視と言われてきたポジションだが実際のところはどうなのか? 各球団チーム内最多出場の遊撃手の打撃成績は以下の通りだ。
<セ・リーグ>
堂上直倫(中日)
今季成績:28試合 打率.271 1本塁打 15打点 OPS.675
田中広輔(広島)
今季成績:35試合 打率299 2本塁打 8打点 OPS.784
坂本勇人(巨人)
今季成績:34試合 打率.348 8本塁打 23打点 OPS.1.057
鳥谷敬(阪神)
今季成績:37試合 打率248 1本塁打 14打点 OPS.663
大引啓次(ヤクルト)
今季成績:19試合 打率.351 0本塁打 5打点 OPS.892
倉本寿彦(DeNA)
今季成績:34試合 打率.328 0本塁打 10打点 OPS.774
<パ・リーグ>
今宮健太(ソフトバンク)
今季成績:30試合 打率.184 0本塁打 14打点 OPS.455
鈴木大地(ロッテ)
今季成績:35試合 打率.315 3本塁打 15打点 OPS.868
中島卓也(日本ハム)
今季成績:27試合 打率.285 0本塁打 9打点 OPS.664
金子侑司(西武)
今季成績:25試合 打率.258 1本塁打 11打点 OPS.710
安達了一(オリックス)
今季成績:19試合 打率.219 0本塁打 7打点 OPS.581
茂木栄五郎(楽天)
今季成績:34試合 打率.237 0本塁打 10打点 OPS.621
やはり坂本(巨人)の打撃好調ぶりが目立つ。今季のキャプテンはキャリアハイの打率.311(12年)、31本塁打(10年)を上回るハイペースで打線を牽引。
この坂本が06年高校生ドラフトで堂上(中日)の外れ1位指名だったのは知られた話だ。あれから10年、両者はともにレギュラー遊撃手として首位を争うチームに貢献している。
そして開幕から全試合で「1番ショート」としてスタメン出場中なのが田中(広島)。2年目の倉本(DeNA)や開幕直後に腰痛で戦線離脱したものの復帰後は打撃好調の大引(ヤクルト)も打率3割を越えている。
パ・リーグでは鈴木(ロッテ)の攻撃力が頭ひとつ抜けている印象だ。興味深いのは今宮(ソフトバンク)で打率.184はパ規定打席到達者36名中36位にもかかわらず、17犠打と5犠飛の2部門でリーグトップ。その高い守備力とともにV3を狙うチームにおいて、なくてはならない存在として定着した。
長年、球界最高の遊撃手として君臨した鳥谷(阪神)も6月で35歳になる。それに取って代わるように台頭してきた多くの若きショートストップたち。坂本と堂上は88年生まれ、田中と鈴木は89年、倉本と中島は90年世代、今宮が91年生まれ。皆、20代中盤で今後しばらく彼らの時代は続くはずだ。
2016年は「遊撃手の世代交代」のシーズンとして記憶されることだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)