生まれ育った地での再スタート
プロ4年目で迎えた一軍初打席――。
日本ハム・大累進が20日の西武戦(札幌ドーム)で、移籍後初出場。プロ初打席は惜しくもセカンドゴロに終わったものの、その後は二塁と三塁の守備にも就き、新天地で上々のスタートを切った。
ウリはもちろん、愛犬にも余裕で競り勝つという50メートル5秒7の超俊足。姉もフェンシングで北海道1位のフィジカルエリート家族だ。
巨人時代にチーム屈指の身体能力を誇った「犬より速い男」は、乾真大との1対1のトレードで北海道へ。道都大から東京にやって来て4年目の春、男は生まれ故郷へ戻る事になった。
若返る二軍のメンバーの中で...
昨季は巨人の二軍でチーム最多犠打を記録するも、2年連続で一軍出場はなし。自慢の足も停滞気味で、イースタンではわずかに5盗塁に終わった。
4年前の2012年ドラフト組は、同期入団のドラ1・菅野智之が完全にエースとして定着し、4位・公文克彦も左のリリーバーとして由伸監督から熱視線。唯一の高卒選手として指名された3位・辻東倫も、今季はイースタンで打率3割以上を残している。
対照的に2位の大累と同じ大卒野手である5位・坂口真規は、育成選手として昨オフに再契約。つまり、大学・社会人野手は、入団3年以内に何らかの結果を残さないと非常に厳しい立場に立たされてしまうプロ野球の現実がそこにはある。
監督も代わり、今の由伸巨人は世代交代の真っ只中。同時に二軍のメンバーも着々と若返っている。
ジャイアンツ球場では、期待のスラッガー19歳の岡本和真がサード、20歳の和田恋がファーストとして起用され、さらに最近は成長株の辻がセカンド、慶応ボーイのルーキー・山本泰寛がショートを守る布陣。大累の大卒4年目という年齢は、二軍ではすでに「若手」ではなく「中堅選手」だ。
内野だけでなく外野にも挑戦するも、一軍への壁は厚かった。結局、プロ入り後はチームの度重なる補強と伸び悩む自分。思うようにいかない現状に、悔しさややるせなさも当然あったはずだ。それでも自他ともに認める人見知りをしない明るい性格で、チームのムードメーカーとしてベンチを盛り上げチャンスを待ち続けた。
気が付けばもう26歳、それでもまだ26歳
そんな時に実現した突然のトレード。これは大累にとって大きなチャンスになるだろう。
13年オフに巨人から日本ハムへ金銭トレードされた市川友也は、巨人最終年の1試合出場から、移籍後の14年は71試合出場と移籍をきっかけに大きく飛躍した。
大累も、移籍後はイースタンで1試合に途中出場したのみで即昇格。内外野守れる万能性とスピードを武器に、新天地での一軍定着を狙う。
8月に誕生日を迎える90年生まれ。気が付けばもう26歳、それでもまだ26歳だ。何かを諦めるには早すぎる。
大累進のプロ野球人生は、地元・北海道で再び動き出した。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)