勝利と同時に「世代交代」も求められる巨人
全員20代、平均年齢23.6歳。
それが2016年の巨人先発ローテである。今季15試合を終え、9勝5敗1分けでセ首位を走る好調な由伸ジャイアンツを支える投手陣。ここまで先発マウンドに上がったのは、菅野智之、高木勇人、田口麗斗、アーロン・ポレダ、今村信貴、平良拳太郎、桜井俊貴の7名。菅野と高木は89年生まれの26歳、助っ人のポレダも29歳、今村と大卒ドラ1ルーキーの桜井はともに22歳、田口と平良の3年目コンビもまだ20歳である。
杉内俊哉、内海哲也、大竹寛、西村健太朗といった原政権時代を支えた30代のベテラン陣は故障や不調で二軍暮らし。昨季エース級の活躍をしたマイコラスも開幕直前に右肩の違和感で戦線離脱。それでも平均年齢23.6歳の先発陣が機能し、チーム防御率3.32はリーグトップの好成績だ。さらに先発ローテだけじゃなく、これまで山口鉄也とマシソンに頼りきりだったブルペンも土田瑞起、田原誠次、戸根千明、小山雄輝といった20代の若手中継ぎ陣が奮闘。もちろんクローザー沢村拓一は健在で、今季延長戦は4戦3勝1分けと接戦の粘り強さを発揮している。
監督が代わり勝利と同時に「世代交代」も求められる新生巨人。昨季貧打に泣かされた打線は新4番ギャレットを中心にリーグトップタイの13本塁打と好調をキープ。一軍昇格させた選手を突然4番抜擢したりサプライズ的な若手起用が多かった原前監督とは対照的に由伸監督はフラットに中井大介、大田泰示、北篤、堂上剛裕といった選手たちを「6番レフト」で試している。どちらがいい悪いではなく、これまでとは違うタイプの選手起用に若手たちもなんとかアピールしようと必死だ。
以前、プロ野球二軍監督にインタビューした際に若手起用について興味深いことを言っていた。
「皆順調に育ってくれるのが一番いいと思います。ただ二人とも頑張れというのが通用する世界じゃない。チャンスは平等に与えています。でも、一軍に行くための席は1つしかない場合がほとんどです」
今の巨人一軍もまさにこの状況にある。開幕直後はチャンスを平等に与える。だが、全員は一軍に生き残ることはできない。毎日がギリギリの勝負。そんなガチンコの競争が活気と緊張感を生み勝利へと繋がっている。
就任時から一貫して「勝つことが第一」と口にする由伸監督。いつの時代も育成のために勝利があるのではなく、勝利のために育成がある。きっとこの競争が巨人の新時代へと繋がっていくことだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)