“育成の巨人”の本気度
開幕前のゴタゴタにも屈することなく、巨人が2016年シーズンを好調に滑り出した。
巨人が毎年のように安定した戦いができる理由の一つに、育成部門の充実が挙げられる。1990年代までは、FA移籍で他球団の4番打者をかき集め、破壊力のある打線を形成してきイメージが強かったが、そんなことをしていては勝てないことは巨人自らが証明している。
2000年以降、巨人は選手育成に力を入れだした。事実、山口鉄也や松本哲也といった選手が育成選手として入団し、その後一軍で大活躍している。
今季から、巨人は新たに“三軍”を創設した。三軍とは、育成選手を中心に30名ほどで形成し、対戦相手は国内の独立リーグや社会人チームなどで、年間90試合ほどを行う予定だという。
そして、そのスタッフがすばらしい。巨人の本気度を感じさせ、“育成の巨人”が復活する予感が漂うのだ。
まずは、監督が川相昌弘。今季の一軍監督の座を高橋由伸新監督と争った人物であり、野球理論やコーチングには定評がある。育成部門の総責任者としては、最適な人物だろう。
さらに、打撃コーチが田代富雄。大洋時代に「オバQ」のあだ名で豪快なホームランを打ちまくった人。もう一人、金城龍彦。そして、投手コーチは阿波野秀幸などなど...。そうそうたるメンバーだ。
もちろん、育成選手の環境は過酷そのもの。年俸は240万円程度で、試合移動はバスが主。北陸地方や、東北方面へもバスで移動する。当然、毎日が野球漬けで、遊ぶヒマもお金もないのだ。そんな厳しい環境の中、ハングリー精神で一軍へ這い上がっていく選手が何人出てくるのか。楽しみでしかない。
「三軍」がもたらす効果
巨人が新設した三軍制度。それは二軍や一軍の選手にもいい影響を与えているという。
たとえば、二軍の選手はこれまでなら二軍で結果を出せなければクビになるだけ、という気持ちが少なくともあっただろうが、これからは三軍の選手との入れ代わりがあり得るのだ。
これまで以上に気合が入っているのが、二軍選手。そして、それが一軍選手の尻にも火を付けている。二軍選手が目の色を変えてやっているとなれば、一軍で結果を出し続けないと生き残れないと思うのは当然のことだろう。
事実、一軍と二軍を行き来している選手は、これまで以上の緊張感の中で野球に打ち込んでいるという。こんな相乗効果が、今の巨人には起こっているのだ。
かつて、“育成の広島”と言われた時代があった。1990年代のことだ。
広島の選手は、金本に江藤、新井や川口など、成功した選手が巨人や阪神へ移籍することが多かった。それでも、二軍の選手を徹底的に鍛え、何人もの選手を一軍へと送り出した。優勝こそ遠ざかっている広島だが、若手が育つ球団として有名だった。
広島から他球団へ移籍した選手の一人が、「練習が楽。広島の半分以下だ」と言ったことがあったが、それほどの猛練習が広島にはあったのだ。
「若手を育成する」。当たり前のようにいわれているが、それができていないのが今のプロ野球界。巨人三軍の選手よ、頑張ってください!