「奪三振率」とは...
みなさん、「奪三振率」なる記録をご存じだろうか。
奪三振“数”なら単純。三振を“いくつ”奪ったかというもので、あの伝説の400勝左腕・金田正一が歴代トップの4490個という不滅の大記録を打ち立てている。2位の米田哲也が3388個だというから、その数はダントツなのだ。
では、奪三振“率”とは何なのか…。「防御率」といえば、みなさんお分かりの通りで、投手が「1試合に何点(自責点)取られるか」を表すもの。計算方法は、「(自責点×9)÷投球回」で求められる。「9回投げて自責点1」ならば、防御率は1.00ということになる。
考え方は、これと同じだ。投手が「1試合に三振を何個奪うか」ということ。防御率は少ない方がいいのだが、奪三振率は多い方が良い。
「奪三振率」の歴代No.1はあの現役選手!
先ほど「通算奪三振数」の歴代記録でとてつもない数字を紹介したが、「通算奪三振率」の歴代トップは誰なのか。三振を奪っている印象がある投手と言えば、先に述べた金田正一のほか、江夏豊や野茂英雄、石井一久らが思い浮かぶのだが、実はその中のどの投手でもない。意外なことに、まだ現役の選手なのだ。
昨シーズン終了時点での、歴代通算奪三振率トップ5(2000投球回以上)は、以下の通り。
【歴代通算奪三振率トップ5】
1位 杉内俊哉 <9.28> 2156個 2091回1/3
2位 石井一久 <8.84> 2115個 2153回1/3
3位 江夏 豊 <8.41> 2987個 3196回
4位 川口和久 <7.81> 2092個 2410回
5位 工藤公康 <7.71> 2859個 3336回2/3
このような結果となっている。
上位5名のうち、現役投手は杉内のみ。1試合で平均9奪三振以上というのも、杉内だけなのだ。
昨シーズンは長年痛めていた右股関節痛が悪化。シーズン途中に離脱を余儀なくされ、患部を手術した。迎えた今年は、後半戦からの復帰を目指して懸命にリハビリ中。早期復帰に自信をのぞかせている。“奪三振マシーン”の完全復活が待ち遠しい。
ちなみに、1シーズンでの奪三振率の最高記録というのは、1998年に石井一久投手(当時ヤクルト)が記録した11.05というもの。この年は196回1/3を投げて241個の三振を奪っている。
昨シーズンのパ・リーグ投手三冠に輝いた日本ハムの大谷翔平は、奪三振率も10.98とかなり優秀な数字を残していた。160回2/3を投げて196奪三振。これは歴代3位の記録に相当し、石井一の最高記録まで0.07差まで迫った。
打者の魅力が本塁打なら、投手の勲章は奪三振。「1試合に何個の三振を奪えるのか」――。投手ならば、こだわりたい記録だろう。