コラム 2016.05.30. 18:00

本当にそれでいいの…? MLBが実施するふたつの“ルール変更”

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近い将来、こういったシーンが見られなくなる...?

次々に打ち出される試合時間短縮策


 先日、MLBオーナー会議の協議委員会において、「敬遠」と「ストライクゾーン」に関するルール改正の合意があったとアメリカのメディアが報じた。

 「敬遠」のルール変更は、ソフトボールの一部の大会で用いられているルール同様、「投手がボールを4球投げなくても、球審に敬遠の意思を示せば打者を歩かせることができる」ルールに変わる見込みだ。

 「ストライクゾーン」のルール変更は、「打者のひざ頭下部」とされている現行の下限を「ひざ頭上部」に引き上げる予定。これはつまり、ストライクゾーンが狭くなることを意味する。

 MLBの規則委員会が承認すれば、選手会の同意がなくともルールの変更は可能。早ければ来季から適用されることになる。


 2015年1月にロブ・マンフレッド氏がコミッショナーに就任して以降、MLBでは試合時間の短縮策が次々に誕生した。

 例えば、「投球間、バッターは片足をバッターボックスに残さなければならない(打席から両足を出してはいけない)」といったものや、外野のスコアボードの横とホームプレートの2箇所にタイマーを設置し、イニング間の時間を計るようにもなった。

 イニング間の時間を計ることは日本でも行われているが、MLBでは「定められた時間の30秒前にピッチャーは投球練習を終了すること」など、秒単位で細かいものまで定められている。

 こういった策が功を奏し、昨季の平均試合時間は2時間53分と、約10分近くも短縮することに成功。ところが、今季は平均3時間台に逆戻り。このことも、今回の「敬遠」のルール変更に踏み込む大きな要因になっていると見ていいだろう。


ストライクゾーンが狭くなれば打撃戦が増えるはずでは...?


 試合時間の短縮は、日米球界共通の課題であることは確かだ。しかし、今回のニュースで首を傾げるのは「敬遠」だけでなく、「ストライクゾーン」も変更されることにある。

 昨季、MLBでチーム打率が最も高かったのはデトロイト・タイガースの.270。チーム打率が.250を切ったチームは12チームもあり、チーム打率.260以上は9チームしかなかった。1試合の平均得点で見ても、2014年の4.07点より多い4.25点だったが、2000年の5.14点から見れば1点以上も少なくなっている。

 投高打低の傾向が強いため今回の変更になったのだろうが、ストライクゾーンが狭くなれば打撃戦が増える。打撃戦が増えれば、間違いなく試合時間も長くなる。そのことからも、「敬遠」で数十秒~数分短縮することと、「ストライクゾーン」におけるルール変更が両立するとは思えないのだ。

 また、敬遠のためのボールに4球を投げる間に次の展開を予想する楽しみが失われるだろうし、投手や野手の心理に与える影響もあるだろう。ちょっとした間(ま)が勝敗の行方を左右することも野球の醍醐味であり、合理性を追求するばかりでは試合が味気ないものになってしまわないだろうか。このままいけば、「ホームランのときはベースを一周しなくてもよい」というルールまで導入されるのではないかと……そんな妙な不安も頭をよぎってしまう。

 どこかちぐはぐな今回のルール変更。“時間短縮”なのか“野球の面白さ”なのか…。永遠に続くテーマにも思えるが、いい落としどころを早く見出し、選手もファンも安心して野球と向き合える状況を作り上げてほしい。


文=京都純典(みやこ・すみのり)

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