メジャーのドラフト会議が迫る!
日米ともに野球シーズン真っ只中であるが、アメリカでは早くも球団の運命を左右する“選択”が行われる。
現地時間6月9日から3日間にわたって開催される、メジャーのドラフト。基本的には前年の下位チームから順番に選手を指名していくため、日本のプロ野球のように競合してくじ引きということはない。
順番で行くと、昨年メジャーワーストの63勝99敗に終わったフィリーズが、今年の全体1位指名権を保有。フィリーズが指名する選手がいわゆるその年の“全体1位”となる。
ただし、今年は絶対的な有力選手がおらず、各球団の戦略が問われるドラフトになりそうだ。
近年特に重要視されるドラフト戦略
メジャーリーグでは、ここ数年特にドラフトが重要視されている。
スモールマーケットのレイズやロイヤルズといったチームは、大金のかかるフリーエージェント(FA)選手の獲得を諦め、低迷期に上位指名した選手によってチームの基礎を作り、常勝球団へと上り詰めている(レイズは再び低迷期に入りつつあるが...)。
スモールマーケットではないが、ナショナルズもかつてワシントン移転後の2005年から7年連続で勝ち越しなし、7年のうち5回が地区最下位と低迷していた。しかし、2009年にスティーブン・ストラスバーグ、2010年にブライス・ハーパーをそれぞれ全体1位で獲得すると、ともにスターダムにのし上がるとともに、チームを常勝球団へと導く活躍を見せている。
そのハーパーは2010年、短大生の時に全体1位指名を受けた。当時の年齢はなんと17歳。この歳で短大生というのは日本ではあり得ないが、悪名高い代理人スコット・ボラスの悪知恵により、1年でも早くプロ入りさせるために短大に飛び級で入学。実質高校2年の年齢で、5年総額10億円以上(出来高含む)という契約を勝ち取ったのだった。
その後はみなさんご存知の通り。メジャーを代表するスラッガーへと成長を遂げ、チームの顔となった。
何人のスター選手が誕生するか...
一方、メジャー屈指の若手投手というと、クレイトン・カーショー(ドジャース)の名前が真っ先に挙がるだろう。
カーショーは2006年に全体7位、投手としては6番目で指名を受けた。先に指名された投手6人のうち、今もメジャーの一線で活躍しているのは全体1位のルーク・ホチェバー(ロイヤルズ)と同6位のアンドリュー・ミラー(現ヤンキース)くらいのもの。
しかし、この年のドラフトではカーショーのあとの全体10位でティム・リンスカム(現エンゼルス)、同11位でマックス・シャーザー(現ナショナルズ)が指名されており、後にこの3人でサイヤング賞を6度も獲得。結果的には先発投手の当たり年として振り返られる年になった。
また、2011年のドラフトでは興味深い出来事があった。この年はFA選手流出によって得られるサプリメンタルピック(※一巡目補足指名権)も含めて60人ものドラフト1位選手が生まれたが、なんとそのうち10人がレイズによる指名だった(全体24位~60位の間に10人)。
前年のオフに大量の選手がFAで移籍したことが主因だったが、この年1位指名を受けた10人の成長次第では、再びレイズに王国時代がやってくるかもしれない。
このようにメジャーのドラフトは数年後のリーグの勢力図を大きく変える可能性があり、その注目度は年々上がってきている。今年のドラフトからはいったい何人のスター選手が生まれるのだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)