今年も欠かせない存在感を発揮するベテラン
イチローの打棒が止まらない。
5月23日に4割を超えた打率(.417)は、今月5日の時点では一旦.313にまで落ち込むも、その後の3試合で15打数7安打の固め打ち。現在は.333とハイアベレージをキープしている。
開幕以降の出場機会を見ても、イチローへの信頼度は日に日に増していることがわかる。
4月は23試合中17試合の出場。シーズン序盤には自身初となる“代打の代打”を送られるなど屈辱も味わった。それでも5月は29試合中の24試合に出場すると、今月はここまで8試合すべてに出場している。
今年も控えというのが濃厚だったイチローの立ち位置であるが、やはり出てきた故障者に加え、不動の4番とみられたスタントンが打率1割台と極度の不振に陥っており、イチローの好調も相まって今後も先発機会は極端に減ることはないだろう。
イチローが打てば、勝利が近づく?
今年、ここまでの高打率を残している要因として、三振が少ないことを挙げたい。
三振率(K%=三振/打席)を見てみると、現在4.8%という数字を記録。これは昨季の11.6%や、自己ベストの2001年(7.2%)を大きく上回る数字だ。今季ナ・リーグで120回以上打席に立った打者は130人いるが、イチローに次ぐ2位がスパン(ジャイアンツ)の9.5%というから驚くべき記録であることが分かるだろう。
もともと打者不利のカウントでも簡単には打ち取られない技術の持ち主であるが、42歳で迎えた今季の2ストライク時の打率はなんと.352(54打数19安打)。120回以上打席に立ったナ・リーグの打者130人で、この数字が3割を超えているのはイチローのみである。
さらに、今年はいわゆる“貢献打”も多い。今季チームが勝利した試合でのイチローの打率は.386(57打数22安打)。敗戦試合での.281を大きく上回っている。
昨季は勝利試合で.232、敗戦試合でも.225とイチローの打撃結果が勝利に直結しているとは言い難かったが、今季は結果的にイチローが打つことでチームも勝利に近づいている。
ここ一番で発揮される驚異的な集中力
最後に、「Late & Close」というメジャー特有の打撃指標を聞いたことはあるだろうか。
これは「7回以降で1点リードか同点、もしくは連続本塁打が出れば同点になるという状況」での成績を示したもの。投手のセーブシチュエーションと似ており、まさに“試合が決まる場面”での勝負強さをはかる指標である。
イチローはこの「Late & Close」の状況で19打数9安打(打率.474)という好成績。昨季はこれが.250だったことを考えても、今季は驚異的な勝負強さを発揮していることが分かる。
大勝を収めた9日のツインズ戦も、勝ち越し点はイチローのバットから生まれた。あの7回に生まれた勝ち越し打こそ、まさに今季のイチローを象徴する一打だった。
三振の少なさや、ここぞという場面での活躍は自身の全盛期をもしのいでいるといっても過言ではない。42歳のスーパースターは個人の安打記録だけでなく、チームに13年ぶりのプレーオフをも手繰り寄せてくれる存在にもなり得る。
文=八木遊(やぎ・ゆう)