「RC27」という指標に注目
早ければ今週中にもメジャー通算3000安打に手が届く、マーリンズのイチロー。昨シーズンは自己ワーストの打率.229に終わったが、今季はここまで.332と全盛期を彷彿とさせる数字を残している。
しかし、ここ数週間はメジャー屈指の若手外野手トリオが好調を維持していることもあり、イチローの先発機会は限定されている。契約面での制約や4人の長打力の違いなどが要因とみられるが、イチローの“攻撃力”はライバル3人と比べて劣っているのだろうか……。
選手の攻撃力を測る成績(指標)には、古くから打率、本塁打、打点があるが、最近はOPS(出塁率+長打率)なども目にする機会が増えた。しかし、OPSには攻撃面には欠かせない走塁面の要素が含まれていないなど、欠点もある。
そこで紹介したいのが、「RC27」という指標だ。
「RC27」とは、「Runs Created per 27」の略。1番から9番まで同じ打者で打線を組んだ場合、27アウトが記録されるまで(=9イニング当たり)にどれだけ得点が生まれるかを算出できる。
これには犠打、犠飛といった進塁能力や、盗塁なども加味されており、より正確に選手の得点能力を測ることができる。日本でもセイバーメトリクスに興味があればご存じのファンも多いだろう。
全盛期に劣らない活躍を見せるイチロー
今季のイチローは、現時点で6.47という数値をマークしている。これは「イチローだけで打線を組んだ場合、1試合に6点以上もの得点を奪える」ということを示している。
これがどれだけ優れているかというと、過去のイチローの数字と比べればよくわかる。MVPと新人王に輝いたメジャー1年目の2001年が6.98、シーズン歴代最多安打を記録した2004年が7.71、低調だった昨シーズンは2.63だった。今季のイチローは、まさに全盛期に匹敵する得点能力を見せているのだ。
マーリンズ外野手トリオのそれと比べても、今季のイチローの得点能力がいかに高いかがわかる。
【マーリンズ外野手の「RC27」】
7.23 クリスチャン・イエリッチ
6.47 イチロー
6.21 マルセル・オズーナ
5.77 ジャンカルロ・スタントン
よりなじみ深い打率や安打数、盗塁数などはよく取り上げられるが、「RC27」で見ると、「イチローを先発で起用しないのはもったいない」という意見があながち間違っていないことがわかる。
衰え知らずの活躍を見せるイチローから目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)