健闘を見せるマーリンズ
開幕前の評価は決して高くなかったマーリンズが好調を維持している。
現地時間20日のフィリーズ戦に勝利すれば貯金は2ケタに乗っていたが、先発したチェン・ウェインが序盤に捕まり、打線も沈黙。1-4でフィリーズに敗れ、地区首位ナショナルズとのゲーム差は5.5に広がった。
それでも今月に入って連敗は一度もなく、10勝5敗の好成績をマークしている。
通算3000安打目前のイチローがクローズアップされがちだが、イエリッチやリアルミュートなど4人が規定到達で打率3割を超えており、打線に抜け目はない。
ナ・リーグ1位のチーム打率を誇る打線のみならず、救援防御率は同4位、守備率も同3位とバランスが取れている。
好調チームの“穴”は…
そんななか課題は先発陣か。エースのフェルナンデスに続く2番手がなかなか定まらない。
本来ならばチェンがその役割を果たすべきだが、防御率は4.99と渡米後自己ワーストのシーズンを送っている。来月1日に迫ったトレード期限を前に、先発投手を1人補強できればポストシーズンが大きく近づくだろう。
リリーフ陣に関してはロドニーの加入でさらに安定感が増しており、先発投手が6回を2~3失点で乗り切れば勝ちが計算できる状況になったといっていいだろう。強いて言えばマイク・ダンに続く左腕が不足しているくらいだろうか。
先発陣のテコ入れはあるか。残り短くなってきた“デッドライン”へ向けて、その動向に注目が集まる。
帰って来る男
また、リーグ1位の打率を誇る打線には心強い選手が戻ってくる。薬物違反のため80試合もの出場停止処分を受けていたディー・ゴードンが、28日にも合流する予定なのだ。
昨シーズン首位打者に輝いた正二塁手の復帰によって、代わりを務めていたディートリッチは控えに押し出される可能性が高くなる。そうなれば、代打率リーグ3位を誇る控えの層はさらに厚くなる。
ゴードンが以前のレベルで活躍できるかは未知数だが、過去に薬物による禁止処分を受けたネルソン・クルーズ(マリナーズ)やメルキー・カブレラ(ホワイトソックス)が復帰後に大活躍したのは記憶に新しい。特に俊足が売りのゴードンならば、全く心配はいらないだろう。
ただし、チームがプレーオフに進出した場合、ゴードンには出場資格がない。これはチームにとって痛手となる。
1993年に誕生したマーリンズはこれまで1997年と2003年に世界一に輝いているが、いずれもワイルドカードからの快進撃だった。初の地区制覇、そして13年ぶりの大舞台へ……。準備は整いつつある。
文=八木遊(やぎ・ゆう)