コラム 2016.09.12. 17:45

「カープ25年ぶりの優勝」をスポーツ新聞各紙はどう報じたのか?

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25年ぶりのセ・リーグ優勝を決め、胴上げされる広島・緒方監督=東京ドーム(C)KYODO NEWS IMAGES

各スポーツ紙広島ネタが1面を飾る


 東京のコンビニも真っ赤に染まっていた。カープ優勝の翌日、スポーツ新聞はもちろん全紙、広島ネタが1面を飾る。なにせ91年以来のリーグ制覇だ。もう25年前…気が付けば前回の優勝は四半世紀前である。今回は、その久々の快挙をスポーツ新聞がどう報じたかを検証してみよう。なお新聞は11日朝8時に東京23区内のコンビニで購入した6紙である。

 まず各紙の1面胴上げ写真を見てみよう。

緒方監督 報知、デイリー、東京中日
黒田博樹 ニッカン、スポニチ、サンスポ

 巨人と関係の深い報知、阪神情報が充実しているデイリー、そしてドラゴンズ機関紙の東京中日の3紙が1面は緒方監督で揃い踏み。ニッカン、スポニチ、サンスポは胴上げされながら涙を流す黒田の姿で写真の構図もほぼ同じだ。さすが黒田というべきか、基本的に優勝1面と言えば監督の胴上げ、マウンドに駆け寄る笑顔のナイン、歓喜のビールかけの三択だったが、男気・黒田の涙にはそれ以上のインパクトがあったということだろう。

デイリーはカープネタ満載


 デイリーは紙面のいたるとろで14年まで阪神に在籍していた新井貴浩ネタを取り上げ、裏1面ではこちらも元カープFA組の金本知憲監督の背中写真とともに「来季こそV頼む」としっかり阪神を鼓舞。2面では緒方監督夫人のかな子さん特別手記で「神ってる」という言葉の誕生秘話を披露。

 東京中日は同じ内容のものを芸能面に掲載していたが、読者からしたら1面の緒方監督の胴上げ写真の勢いそのままに2面で夫人の手記を読めた方が嬉しい。なんと6面までオールカープ記事。さらに芸能面でも見開きカラーで広島の街でビールかけをするファン、吉川晃司、奥田民生、久米宏、チュートリアル徳井義実らの喜びの声を伝え、もちろんお約束の杉原杏璃の真っ赤な優勝ビキニ写真もしっかり抑えて、王道路線で質量ともにデイリーの広島優勝報道は他紙を一歩リードしていた。

 このデイリーと同じく、広島優勝を報じつつ、スポーツ報知は東京出身の鈴木誠也を推しながらも5面で「巨人2年連続V逸」、さらに東京中日は「コイと歴然の差 竜かみ合わず」と中面でサポートする自軍への喝も忘れていないのは各紙の意地である。

 毎年独自の視点で優勝を報じるニッカンは今年も健在で、イケメン俳優の谷原章介をなぜか「待った舞ったカープ芸人この瞬間」と大きく取り上げ、広島カープのパンチパーマの歴史を辿り「ヘアーサロン十日市」を山本浩二氏や高橋慶彦氏らの懐かしい写真とともに振り返っている。ちなみにニッカンとスポニチはともに田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の同級生座談会を掲載しているのだが、その内容は冒頭は同じ始まり方で、途中からそれぞれネタが変わる。なんとか他紙とは被らないように、限られた時間での紙面作りの苦労が伺える構成だ。

 サンスポは裏1面に昨年までのカープのエース前田健太(ドジャース)の喜びの声を掲載。これこそ、ある意味どんな大物OBよりもファンが最も読みたかった優勝談話だと思う。ネタは重さより鮮度が命だ。「99%は心の底からうれしい。でも1%はその場にいたかった」という見出しも秀逸で、マエケンが心の底から古巣の優勝を祝福しているのが伝わってくる内容である。


各紙まんべんなく取り上げた松田元オーナー


 そして、今回の広島の優勝報道で各紙まんべんなく取り上げていたのが「広島カープ・松田元オーナーの喜びの声」だ。しかも各紙独自のアプローチで非常に濃い内容に仕上がっている松田記事。FA導入や逆指名ドラフト時代の苦闘の日々、球場建設の裏話。65歳のオーナーが25年間の歩みと広島愛を語っているのを読むと、思わずもらい泣き。ちなみに「マツダスタジアムのコンコース幅12メートルは、広島の本通りの広さと同じ」とのことだ。球場の通路1本まで自分の問題として語れるオーナーは、日本球界で松田氏だけだろう。

 優勝翌朝、この日だけはスポーツ全紙を買って読み比べるファンも多い。つまり同じテーマで各紙がネタと腕を競うガチンコ勝負。その何気ないレイアウトひとつから勝負は始まっている。とどのつまり、優勝報道とはスポーツ新聞のオリンピックみたいなものである。次はパ・リーグ優勝チーム決定翌日を楽しみに待とう。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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